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涼風の残響【鬼滅の刃】

第20章 強化訓練と育手


勇が風音からの謝罪を望んでいないなど実弥だけでなく風音本人が百も承知である。
それでも謝罪を……と言うのであれば、それなりの想いや鬼殺隊に入り誰からの助けもなく、初めて出来た友と向き合いたいと思ってのことだろう。

そんな風音の感情を無理に止める必要はないと判断した実弥は、どうにか気持ちを持ち直した風音の頭を撫で今度は強く抱き締めた。

「そうかィ。風音の素直な気持ち伝えりゃ、立花なら受け取ってくれるだろ。なんたってお前のこと……好いてるからなァ」

少し拗ねたような口調にクスリと笑い、モゾモゾと実弥の胸元で身動ぎして背をのばし頬に口付けを落とした。

「勇さんの気持ちには驚いたけど嬉しかった。でもね、私はやっぱり実弥君しか見えなくて、どうしても実弥君じゃなきゃダメなんだよ。こうやって抱き締めてくれたり頭を撫でてくれたり……名前を呼んでもらえるのでさえ幸せって感じる。どうしようもなく愛しいです」

(……南無阿弥陀仏)

体に伝わる風音の暖かさや恥ずかしげもなく紡がれる惜しげもない愛情表現の言葉、見つめてくる瞳や柔らかな金の髪。
それらにうかされ今すぐにでも愛でたい……と思っても、今この屋敷の中には多くの剣士たちがいる。

婚約を交わしたと公言したといえど欲を吐き出す行為など出来るはずもなく……呑気にふわふわと笑顔を浮かべている風音に対して目を血走らせ念仏を取らざるを得なかった。

「実弥君が大好き。あの……色々落ち着いたら……昨日の夜みたいなことしてほしいな。私も本を読んだりしてお勉強するから……その……気持ちよく……なってもらえるように頑張るね」

「風音……お前なァ、俺の理性は鋼じゃねェんだぞ。せっかく念仏唱えて抑えてたってぇのに……どうしてくれんだよ」

それを発散させる術(すべ)は昨夜教えてもらったので、自然と風音の視線はそちらへ向かい……手も向かいかけたところで全力で実弥に止められた。

「ふざけんなァ……今それはさすがにやべぇだろ。はァ……俺のことはいいから風呂入ってこい。落ち着いたら晩飯の準備しててやるから」

「そ、そうだよね!加減がわからなくて……つい。お、お風呂いただいてきます!ゆっくりしてて大丈夫だからね!」
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