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涼風の残響【鬼滅の刃】

第20章 強化訓練と育手


そして同日の夜。

やはりその日は誰も風音の稽古に漕ぎ着ける者は現れなかった。
実弥の激しく厳しい稽古にほぼ全員が一度は気を失い、風音の手当てを受けている間だけ一息つけていたらしい。

そんな剣士たちは現在、順番に風音が調合した薬入りの風呂へと入り、体と心の傷を癒しているところである。

「風音、入るぞ」

「あ、うん!どうぞ!」

傷だらけの剣士たちにせめてもと薬を風音が自室でつくっていると、既に風呂に入り終えた実弥が呆れ顔で室内へと入ってきた。

「お前も少しは休め。朝から動きっぱなしだろ」

早朝に家事を全て終わらせ、稽古の合間に自分たちの分のみならず剣士たちの昼餉・夕餉まで準備を行い、今は夕餉を食すまでに作り終えたいと言って自室にこもり薬を作っているのだ。

短時間といえど剣士たち相手に力も使ったので眠気があるはずなのに、どうにか目をこじ開けて一心不乱に薬作りに没頭していた風音の側に腰を下ろし、肩を抱き寄せて自分の体に預けさせてやった。

「フラフラじゃねェか。飯なんざテメェらで作らせりゃいい」

「せめて初日だけでもね。皆さん頑張ってたし、私が一番元気でしょ?だから少しでも皆さんの負担を減らしたかった」

実弥の暖かさにホッと一息つくと張り詰めていた糸が一気に解け、瞼が徐々に閉じてしまいそうになる。
それでもどうにか目を開き、意識を保たせるように実弥の背に腕を回してしがみついた。

「ねぇ、実弥君。ここには私のお父さんによって大切な人を失った人が二人もいる。いつかはこんな日が来るんだって分かってたけど……胸が痛い。勇さんは弟さんを亡くしたのに……私、そんなことも知らず、笑顔で話し掛けてくれる勇さんに呑気に笑って返してんたんだ」

背に回された手が震え体は今にも崩れ落ちそうなほどに力をなくしている。
実弥はそんな体を足の間に座らせ、落ち着かせるために柔い力で包み込んだ。

「笑ってりゃいいんだよ。アイツはお前に笑ってて欲しかったから言わなかった。俺も…… 風音に言うつもりなかった……って言うか、立花に口止めされてた。風音は何も悪くないから秘密にしててくれって。那田蜘蛛山の任務の後、仔細報告で呼んだ立花からなァ」
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