第20章 強化訓練と育手
まさかの展開に目を丸くしたのは実弥だけでなく風音も、例の剣士も同じく。
「んだよ、お前…… 風音のこと……」
「そうですよ!可愛いし優しいし努力家だし!人のために暗い山の中を一人でかけずり回れる子ですからね!そんな子なかなかいないでしょ!今も殴られても一切怒んないし……まぁ、自分の腕切ったり自己犠牲精神凄いのがたまにキズですが」
「お、おう。すげぇ風音に惚れてたのは分かった。分かったが話が進まねェ……お前は風音の手当てでもして待ってろ」
風音への想いをここぞとばかりに叫んだ勇は実弥によりポイと投げ捨てられ、風音の隣りに着地した。
何とも言えない気まずい空気を醸し出す二人をチラと確認して苦笑いを零すと、実弥は剣士へと向き直って話を続けた。
「何で俺を殴らねェのかは置いといてだ。お前は……一般人にも同じことすんのかよ。肉親が鬼にされ目の前で知らねぇ奴にその肉親の頸斬られた人に、仲間の仇の肉親だからって殴ってグチャグチャにすんのかよ。悲しみ苦しんでる人に追い討ちかけんのかァ?」
「それは……」
するわけがない。
鬼によって苦しむのは鬼による犠牲者だけでなく、鬼にされてしまった人の肉親も同じだからだ。
剣士をしているとその肉親から怨みを買うこともある。
人殺し、家族を返せ……と言われたこともあるからだ。
「風音はなァ、嘆き悲しむだけじゃなく、自分の手で自分の大好きだった父ちゃんの頸斬ってんだよ。命を奪った分痛みを知れって、手足を切り飛ばして体を蹴り飛ばし……鬼にとっての猛毒を父ちゃんに頭から被せてからなァ」
あの時の風音を思い出すだけで未だに実弥の胸に痛みをもたらしている。
気が狂うほどの悲しみを心の奥底にしまいこみ自らの父親を罰する風音の心は壊れてしまいそうだった。
頸を斬った後の泣き崩れる風音の姿が……昔の自分や玄弥を彷彿させる。
「そんな……こと」
「知らねぇよなァ?だから立花は俺に聞いてきたんだよ。アイツに何があったのか、何で鬼殺隊にいるのかってな。剣士だって柱だって人間だぞ……自分たちの力不足を棚に上げてアイツに八つ当たりすんなァ。……アイツを泣かせた分、俺が存分に可愛がってやらァ」