第20章 強化訓練と育手
不死川邸へと遥々やって来てくれた剣士たちを改めて歓迎すると、どうやら実弥の稽古を受けに来たのではなく風音の稽古を受けに来たらしい。
最近柱となった数少ない少女柱との追いかけっこ稽古に胸を弾ませて来たのに、気が付けば木刀を握らされ、気が付けば風柱相手に地獄の無限打込みに引き込まれてしまっていた。
「立ちやがれェ!まだ気ィ失ってねェだろ!血反吐吐いて気絶するまで休憩なんかあると思うなァ……いくぞォ!」
「ぎゃああああ」
という具合に穏やかだった庭は阿鼻叫喚。
風音は傷薬を片手にニコニコと見守っている。
「君が柊木風音か?最近柱になったって言う」
そこへ数人の剣士たちが新たに到着した。
続々到着する剣士たちの存在が嬉しく、背後にいる剣士たちに笑顔で向き直ると、顔を確認する前に風音の頬に激しい衝撃が走った。
無警戒だった風音は咄嗟のことに反応出来ず、体は地面に叩きつけられ痛みに顔が歪む。
「風音!テメェらぁ!柱と言えど女にいきなり手ェ出すなんざどういう了見だァ?!おい、風音……」
「実弥君、待って。私は大丈夫だから……手を上げられる……心当たりあるから……」
いきなり頬を殴られ地面に倒れた風音に駆け寄ろうとした実弥は、いやに強い光を放つ風音の瞳と、確信を抱いた言葉に動きを止められた。
目の前で頬を腫らす少女が怨みを買うなどありえない。
暴走することはあっても人に危害を加えることなどないからだ。
その少女が殴られ痛みに顔を歪める原因など……実弥には一つしか思い浮かばなかった。
「父ちゃんのことはお前が……」
「違うんだよ。この方たちの大切に想う人は私のお父さんに命を奪われた。その怒りが私に向くのは自然なことだから」
そう言って風音は立ち上がり剣士たちへと向き直る。
すると想像通り、怒りに満ちた……憎しみのこもった表情で風音を見据えていた。
「私の父が……あなた方の大切な人々の命を奪ったこと、謝罪して済む問題ではないと理解しておりますが……まずは謝罪させて下さい。申し訳……ございません」
「やっぱりお前の父親かよ……俺の仲間がお前の父親に殺されたんだよ!新しく柱になった剣士の名前聞かされて……何でよりにもよってって……」