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涼風の残響【鬼滅の刃】

第3章 能力と剣士


つい今し方言った言葉を理解しているとは思えない発言に頭痛を覚えながら、握り締めている手をコツンと風音の額を当てた。

「だから俺の心配する必要ねェって言ってんだろうがァ……自分の父ちゃんを滅することがどう言うことか分かってんのかァ?父ちゃんの頸を斬って亡き者にするってことだぞ?」

もちろん風音だって理解している。
この屋敷に帰ってくるまでに嫌というほど考えたことだから。

風音は人を斬ったことはもちろん、手を上げたことすらない。
でも鬼殺隊に属する人は皆同じようなもののはず。

人を斬ったことがない人が鬼の頸を斬って、人を助けているのだから。

「分かっている……つもりです。でも同じような経験をしている人……鬼殺隊にはたくさんいるのではないでしょうか?自分の親兄弟が鬼になって人を傷付けていたら……頸を斬りますよね?だって……そうしなきゃ他の誰かの大切な人が死んじゃうから」

いくら大切で失いたくなくて側にいて欲しい人でも、鬼となり人を傷付けてしまえば許されなくなる。

震えて涙を流しても父親が人に戻ることはないし、人を傷付けた事実は変わらないのだ。

「例えば……お父さんに実弥さんを傷付けられたら……柱の方や鬼殺隊の人たちを目の前で殺されたら、私は辛くて辛くて生きれない。誰かのため何て言いつつ、私のためなんです。私はそうなるのが怖くて仕方ないです」

何故こうも会って二日しか経っていない自分を慕うのか……実弥はずっと理解出来なかった。
今も確信があるわけではないが、何となく理解出来つつあった。

瞳の色から始まり、特異能力、髪の色。

実弥は全てに対して抵抗がなかった。
そもそも自分を含めて柱の多くが様々な髪色、瞳の色をしている。

特異能力に関してもお館様が持っているし、鬼殺隊の剣士は普通の人が持ち得ぬ呼吸の技を駆使して鬼と戦っているからだ。

何気なく受け入れた風音の全てが、風音にとって今まで受け入れられず迫害されてきた要因だったのだと思えば、こうも懐かれたことに納得がいく。

一方にとってはたったそれだけのこと、一方にとってはそれだけ大きなことで懐き慕う風音の様々な感情の入り交じった瞳を見つめ、額に当てていた手を開き頬を軽く摘んだ。
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