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涼風の残響【鬼滅の刃】

第19章 お薬と金色


誰かと……大切で守りたくて……それでも守れず失ってしまった誰かと自分を重ねているように感じた。
それが誰かなど聞いていないし軽々しく聞いてはいけない気がして、風音はただ頭を撫でてくれる優しい感覚に笑みを浮かべたまま。

「間に合いますし、きっと皆さんも喜んでくださいます。柱同士の手合せもありますし、お稽古が始まったら私ともぜひ手合せお願いします!夙の呼吸は跳躍系の技が多いので、流麗な動きの水の呼吸を受け流すことが苦手なんです!」

ふわふわと笑っていたかと思えばキリッと苦手なことを打ち明けられキョトンとするも、自ら望んで関わろうとしてくれる風音の言葉が嬉しく、頭を撫でていた手を離して頷き返した。

「あぁ、ぜひ手合わせ願おう。風音、時間を取らせて悪かっ……どうした?」

ふわりと風音の顔の横に垂れている後れ毛が嬉しそうに舞った。
それに伴い風音の表情もはにかんだような柔らかな笑みとなったので、義勇は目を丸くして首を傾げている。

「私、未だにお名前で呼んでいただくことが嬉しいんです!かつては鬼子と呼ばれていたので……今思うと鬼子ってすごく失礼ですよね!私は人を襲わないですもん!うーん……でもそれがあったから、こうして実弥君や冨岡さんとお話し出来ているんだと思えば瑣末なことですね」

風の噂で風音は実弥と二人で過ごしている時、口を開けば永遠と楽しそうに話し続けると耳にしていた。
その時と雰囲気は違うのだろうが、なるほどこんな感じで実弥に話し掛けているのだと嫌でも理解できた。

(不死川はこんな風音が好きなのだろうな。……つまり俺も不死川に対して話し続ければ仲良くなれるのか)

未だに楽しそうに他愛もない話を続ける風音に相槌を打ちながら、義勇は自分も実弥に積極的に話を楽しそうに永遠とつづけよう……と決意してしまった。

実弥が面倒くさがらずに話を聞き続けるのはきっと風音だからこそ……

義勇の決意が悲しい結果に繋がらないことを祈るばかりである。
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