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涼風の残響【鬼滅の刃】

第19章 お薬と金色


以前、風音が鬼舞辻無惨から奇襲を受けた際のことを言っているのだろう。
柱であることに負い目を感じている義勇に言った風音の言葉について。

まさか自分が言った言葉を返されると思っていなかったが、わざわざ風音と実弥の後を追い掛け、途中で合流した今は別室で休んでいる行冥と共に義勇はこの家までやって来たのだ。

そして実弥と顔を合わせると同時に怒鳴られながらも風音の手を取り、聞きたいことがあるから時間をくれと申し出てくれた。
そんな義勇に対してはぐらかすなど出来ず、正直に答えることにした。

「実はつい最近まで、私も自分自身のほぼ全てを認めることは出来ていませんでした。いつも誰かに助けていただいてばかりで泣いてばかりで。でもね、実弥君が柱の皆さんが……私の尊敬する皆さんが、私が隣りに立つことを許してくださって、少し認識が変わりました」

義勇からサチへと視線を一度落とし小さく息をつき、静かに耳を傾けてくれている義勇へと視線を戻す。

「認めて下さった方々の想いに応えるために……柱としての責務を果たせるように、私のこの生まれ持った力や身につけさせていただいた力を信じて、戦いに挑みたいと強く思うようになりました。私は冨岡さんとも一緒に、多くの方の想いを繋げて行けたらなって思います」

風の噂で風音は母親を鬼に殺されてしまったと聞いている。
父親は柱全員が知っている通り下弦の鬼となり果て、自らその頸を落としたと聞いている。

出会った当初はあまりに細く、いつ倒れてもおかしくないのではと心の中で心配していたのに、いつの間にか実弥の弟子となり継子となり、厳しいであろう実弥の鍛錬をこなし任務を完遂させ、本日をもって柱にまで登りつめていた。

辛く険しい道のりだったはずなのに、目の前にいる自分より歳若い少女は穏やかな笑みを浮かべ、それら全てを背負い前に進むと明言してのけた。

義勇は苦手なサチがいることも忘れ、遥か昔に穏やかに笑い、身を呈して鬼から守ってくれた姉の面影を重ね、いつの間にか風音の頭を撫でていた。

「今からでも遅くないのならば……俺も繋げていく努力をしてみようと思う」
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