第19章 お薬と金色
会議の際は出て行くと言っていた義勇も残ってくれた。
壮絶な戦闘光景に何か心を動かされるものがあったのかもしれない。
全員参加の本日の会議で決まったことは、柱を含めた剣士全員の戦闘力の強化である。
柱指導による叩き上げ訓練だ。
剣士全員がそれぞれの柱の元へ赴き、柱が課す課題をこなして行くというもの。
その名も『柱稽古・合同強化訓練』
もちろんその稽古では柱の戦闘力の強化も組み込まれており、折を見て柱同士の手合せも同時に行われていくこととなる。
それに加えて『痣』の発現。
現在痣が発現しているのは実弥、蜜璃、無一郎、そして本日就任式を終えた風音の四名だ。
説明が苦手な風音や蜜璃の拙い説明を、実弥と無一郎が補う形で改めて発現方法の報告を行った。
それをもとに柱のみならず合同強化訓練で一般剣士たちにも発現させる手筈である。
「柱の稽古……私は剣士の方々に何をしてもらおうかな?実弥君は……実弥君?!大丈夫?!ごめんね……あんな光景見るの……辛かったよね」
会議を終え日が傾きつつある現在、風音と実弥は皆より一足先に本部を離れ、玄弥の待つ藤の花の家紋の家へと足を向けているところだ。
そんな中、柱稽古の内容を考え意見を求めようと隣りを歩いている実弥を風音が仰ぎ見て……足が止まった。
見たことのないほどに実弥の表情が悲壮に満ちていたから。
慌てふためき涙目になってしまった風音を一瞥すると、未来で切り落とされてしまっていた細い腕を引っ張り、自分の胸の中にすっぽりとおさめた。
「お前が謝ることなんてねェだろ。見せろっつったのは俺で、手を貸してくれっつったのも俺だ。絶対にお前らを死なせねェ、絶対全員で生きて戻んぞ」
実弥の小さく震える声に頷き、体の震えが早くおさまりますように……と祈りながら強く抱きしめ返した。
「もちろんだよ。実弥君も玄弥さんも時透さんも、悲鳴嶼さんも私も全員生き残る。生き残って鬼舞辻無惨を他の方々と一緒に倒そう。大丈夫だよ、皆死なないから。実弥君を悲しませたりしない」
静かながらも明瞭に実弥の耳に届く心地よい風音の声に体の力を抜き、柔らかな頬に手を当てて自分の顔を見るように促した。