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涼風の残響【鬼滅の刃】

第19章 お薬と金色


「あんなもん……繰り返し一人で見てたのかよ。あんなもん一人で見てりゃ誰でもすぐに妙案浮かぶはずねェ。はァ……起き上がれそうか?」

「起き……上がれます。まだまだ平気です。何かいい案が思い浮かぶまで前を向きます」

優しく暖かなものは実弥の腕だった。
風音の背に添えられた実弥の腕は、労わるようにゆっくりと上下に動いている。

ここでいつものように抱きすくめないのは、柱となり後輩たちを導く立場になったからだ。
それを分かっている風音は手を強く握りしめて頷き、涙を拭って皆を視界に入れる。

するとそれと同時に手が一人の柱によって強く握られた。

「生きるために一緒に考えよう!今まで気付いてあげられなくてごめんね。先を見ることが……意図せず先が頭に流れ込んでくることが、こんなに辛いことだったなんて知らなかった。刀鍛冶の里の時も……辛かったよね」

手を握ってくれたのは無一郎だった。

亡くなる柱は霞柱である無一郎。
自身の死を目の当たりにしても尚、風音を思いやってくれる無一郎の手を握り返し首を左右に振った。

「私は大丈夫なんです。私はこうして心を癒し励まして下さる方に囲まれていますから。……私も今のところ死が予定されている身、一度に全員は難しいので、まずは時透さんと玄弥さんの死を回避する方法を考えましょう!」

涙で濡れた目をキリッとさせた風音の姿や言葉を後目に、実弥は先ほど頭に流してもらった光景を頭に巡らせる。

(相変わらず自分は後回しかよ。優劣付けれるもんでもねェから強く言えねぇけど…… 風音の死も悲惨だったろうが)

実弥や皆の頭に流れてきた風音の死は、無一郎や玄弥と同じように悲惨なものだった。

全身に裂傷を負わされ、綺麗な翡翠石のような瞳や柔らかな風を生み出す腕が片方ずつ奪われていた。
そして致命傷となったのは胴体が分断される寸前までに深く切られた、肩から脇腹にかけての刀傷。

それでも数十秒間動き続け先を皆に送っては鬼の攻撃をいなしていたのだ。

(許嫁と弟と仲間の悲惨な死はさすがに堪えるが……落ち込んでる時間はねェ)

実弥と同じ光景を見せてもらった柱たちやあまね様も想いは同じ。

涙の止まった風音とその風音を励ます無一郎を混じえ、本格的に総力戦に向けた会議が行われた。
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