第19章 お薬と金色
そこまで考え動いてくれていたとなればこれ以上否と言えるわけもない。
どうしようもない現実に風音は俯き一度目をキュッ強く閉じてから全員を見回した。
「皆さん、お力添えいただきありがとうございます。では……本日は……以前にお話した日時より少し遡って……上弦の壱と戦闘を開始したところを見てみます。その場所にいた実弥君、悲鳴嶼さん、時透さんはそれぞれの視点で、他の方は実弥君の視点で……調整します」
現状で戸惑わずに皆に送れるのは以前に見た光景の前後である。
……実弥に一番見せたくない未来であるが、貴重な時間を戸惑い無駄にするわけにはいかないので、この未来を軸に幅を広げていくしかないのだ。
心臓が嫌な音を立て手が震える。
それでもどうにか気を奮い立たせ実弥を見上げると、頭を撫で手を握り締めてくれた。
「俺がどうにかしてやるって言ったろ?お前は自分に傷が跳ね返ってこねェことに集中してればいい。……見せてくれ」
「うん……では皆さん、いきます」
皆が頷くのを確認すると、独特の色を放つ瞳をそれぞれの位置を正確に捉えるように巡らせて予知を開始した。
(あぁ……ここだけでたくさんの命が散ってしまう。それでも戦い続けなければならないなんて……残酷な世界だ)
上弦の壱を倒すまで。
そこまで皆に光景を送り続けて風音が感じたことだ。
やはり風音自身も亡くなっていたし、玄弥も柱の一人も亡くなってしまっていた。
シンと静まり返る部屋で風音が一番初めに動き、涙で濡れた瞳を恐る恐る部屋全体に巡らす。
すると全員が既に風音に視線を向けており、誰一人として目の合わない者はいなかった。
「これが……本来迎えるはずの未来の光景です。経験不足な私一人では何度見ても……誰一人として救える未来を見ることが出来ませんでした。どうか……どうか私に知恵をお貸しください。お願いいたします」
堪えていた涙が頬を伝い畳へとポタポタと滴り落ちていく。
自分一人の知識では誰も助けられず、吐き気を催すほどの胸の痛みが風音を襲い、思わず項垂れて嗚咽を漏らした。
そんな風音の丸まる背中がふわりと優しく暖かなもので包み込まれた。