第19章 お薬と金色
この場に天元が現れたことを皆が咎めないということは、風音の就任式が繰り上げられる時点で急遽決定し、それを皆が了承したということ。
そして報せを受けた天元が本部へ駆けつけ、こうして合流を果たしたわけだ。
こうした経緯があるのだろうと何となく察した風音が異を唱えることは出来るわけもない。
柱全員のみならずあまね様もが認め取り決まったことなのだから……
「はァ……なんでコイツが柱退くの認められたと思ってんだ?四肢の欠損してねェ、戦いに支障きたす後遺症すらねェんだぞ。普通なら戦力になる宇髄が退くなんぞ認められねェ」
眉を下げ悲しそうな表情をしていた風音へ実弥からの突然の質問。
何故と実弥に問いかけられれば答えを返すしか選択肢のない風音だが、考えたこともなかった事柄に言葉を詰まらす。
(どうして……ただ天元さんや奥様たちの想いを汲み取ったからだけじゃない……ってことだよね。……天元さんは強いから戦力として残したかったはずなのに、除隊することを認めた理由……)
頭の中を全力で働かせても答えが分からず考えること数分。
誰もが風音と実弥の遣り取りに口を挟まず見守ってくれているが、そろそろ答えを出して答えなくては……と焦り始めた頃。
実弥自ら助言がもたらされた。
「お前と煉獄んとこの継子、上弦の鬼と遭遇しても生き残ってんだろ。柱でさえ殺されかねねぇ上弦相手にだ」
「はい。つまり……柱候補となる者が育ちつつあったから……と言うのが天元さんが、柱を退くことを認められた理由の一つですね?」
実弥の助言から導き出された風音の返答は合っていたようで、誰もが否定の言葉を出さず、実弥は頷き返してくれた。
「あぁ。あとは後輩育成に力を貸すっていうのと、戦闘以外で鬼殺隊の力になるっつう提案を宇髄自身が出てきたんで、特例として退くことを認められた」
「そう言うこった。前に不死川の家で嬢ちゃんが見たの教えてくれたろ?俺も迷いはしたんだが、総力戦が始まるのが決まってるなら俺も先に何が起こるのか知ってた方が色々動き易い。ってなわけで俺から願い出てここに合流させてもらった」