第19章 お薬と金色
そして実弥も続いて気が付いた。
優しい視線を送ってもらっていると勘違いしている風音は、先に場を騒がしたことに対する謝罪として頭を皆に下げ、後はニコリと呑気に笑みを浮かべてお行儀よく正座。
実弥は顔を真っ赤に染めながら、まずはあまね様へと頭を下げ……皆には鋭い視線を漏れなく送った。
この何とも言い難い空気漂う部屋の中へ……一人の男が元気に登場した。
「失礼致します!あまね様、息災で居られるようで安心しました」
「宇髄様もお元気そうで嬉しく思います。お待ちしておりました、どうぞ中へお入りください」
部屋に現れたのは、先日柱を退き鬼殺隊を除隊した天元だった。
あまね様へと丁寧に頭を下げて部屋に入り、いつの間にか輪になるような形で座っている柱たちの間に腰を下ろして首を傾げる。
ニコニコ笑顔の風音、耳まで真っ赤に染め縮こまる実弥。
そして柱やあまね様が漂わせる妙に生暖かい空気。
それらのもの全てを目にして……天元の勘がピンと働いてしまった。
「何か派手に面白ぇ空気漂ってんじゃねぇか。おい、不死川、また皆の前で嬢ちゃんを」
「宇髄!今し方風音の就任式が無事に終わったところだ!見てみるといい、あんなに儚げだった女子が今では柱だ!君の跡をしっかり継いでくれるだろう!頼もしい限りだな!」
危うく実弥の逆鱗に触れそうになった天元の言葉を上塗りするように声を張り上げたのは杏寿郎。
初めは冷や汗をかいていたようだが、風音と風音の師範であった実弥を見つめる瞳は、力強くも優しいものとなっている。
「ん?あぁ!確かにな!そうかそうか、嬢ちゃんもついに柱になったんだなぁ。似合ってんじゃねぇの!その隊服!」
「ありがとうございます、杏寿郎さん、天元さん。こうしてここに居られるのも実弥君を始めとした、柱の皆さんが私を受け入れ育てて下さったお陰様です。ところで天元さんも……もしかして……先を見るためにここへ?」
天元の登場により今度は風音の勘がピンと働き、無事に話を軌道修正。
ただ風音は悲しそうに眉をひそめてしまった。
「そ!俺はさすがに戦闘に参加しねぇけど、有事の際は動くつもりでいるからな。だからそんな悲しそうな顔しなさんな!俺も元とは言え柱だ!嬢ちゃんたちの力にならせてくれよ」