第19章 お薬と金色
「俺は……お前たちとは……いや、柊木一人に辛いものを見せるわけにもいかないので……それだけは見せてもらう。だがそれが終われば俺は失礼する」
「おい、コラ待て。失礼すんじゃねぇよ……見るだけなら誰でも出来んだろうが!先見て何も考えねェならコイツに押し付けんのと変わんねぇって分かんねェのかァ?!」
普段なら今すぐにでもこの部屋を出て行こうとしていたであろう義勇が、今は僅かな時間でもこの場に留まり先に起こる総力戦に尽力しようとしている。
だがあとひと踏ん張りが上手くいかなかった。
皆の予想通り義勇の言動に、先ほどまで穏やかな表情を浮かべていた実弥が反応してしまう。
そしてしのぶも。
実弥ほどではないものの、義勇のあまりの言葉の足りなさに静かに窘め始めてしまった。
そんな混乱した状況の中、静かに佇む義勇とそれに掴みかかろうと立ち上がりかけた実弥の間に、チラと話題に出てきた風音が滑り込む……
「うぎゃっ!」
ズザーッと……畳の縁で躓き転ぶ形で。
「ーーっ?!おいっ!何やってんだよ……あ"ぁ"ー!もう!」
((不死川(さん)が、らしくない叫び声を上げた!))
声には出せない。
各々が声に出さずとも同じことを考えたと理解し合った柱たちは実弥に気付かれぬようひっそり頷き合い、そそくさと風音を起き上がらせに行った実弥をこっそり見守ることとした。
「何でこんなとこで転んじまうんだよ……ほら、起きろ。大丈夫か?怪我はねェな?」
無事に柱たちの視線に気付いていない実弥はいつもの癖で風音の世話を焼く。
それを日常的にしてもらっている風音も何の疑問も持つことなく受け入れる。
「ごめんなさい……怪我はないよ。実弥君の気持ちはもちろん、冨岡さんの想いも何となく分かるような気がするから……喧嘩してほしくなくって。同じ仲間同士で傷付け合うのは……悲しいな。だから……あれ?」
先にこの部屋内の異変に気が付いたのは風音だった。
何故か皆が優しい(生暖かい)視線を二人に送ってくれているのに気が付いたのだ。
「そもそも冨岡が余計なことを言わなけりゃ……こんなことには……あぁ……やっちまった」