第19章 お薬と金色
「……おい、爽籟。楓と一緒にいたろ?楓どこ行ったんだァ?」
こちらは柱合会議会場である産屋敷邸の庭内。
中休み時間中のようで小芭内と共にそれぞれの鎹鴉の様子を見に来たようだ。
そこで見つけたのがオロオロとあっちへこっちへと飛び回る爽籟の姿だった。
「分カラナイ……少シ目ヲ離シタ隙ニ居ナクナッテシマッタ。モシカスルト家ニ向カッタノカモ……実弥ノ話ヲ聞イテ」
シュンとして実弥の肩に降り立つ爽籟の頭を撫でてやり、小芭内と向き合う。
「楓はお前が『今から呼んでもすぐ駆け付けるような奴です』とか言ったから、今日就任式があると勘違いし柊木を呼びに行ったのではないのか?どうするんだ?今から柊木がここに来たとて新しい隊服も日輪刀もないぞ」
小芭内の相変わらずの問い詰めに実弥はガクリと項垂れ、相棒と同じくそそかっしい楓に思いを馳せた。
「あ"ぁ"……想定外の行動すんのもそっくりかよ。てかどうするっつっても爽籟飛ばして途中で追い返しちまうのも可哀想だろォ……はァア……近くの街で待たせとく。伊黒、夕庵も連れてって構わねェか?」
疑うことを知らない風音が楓の言葉を訝しみ宥め大人しく不死川邸に帰るとは思えない。
きっと今頃慌ててこちらに向かっているはず……そう確信した実弥は小芭内の肩にとまっている夕庵の首元を撫でる。
なぜ夕庵を必要とするのかなど小芭内であっても瞬時に分かり、嫌がる様子の全くない相棒を掬い上げて実弥の肩に預けた。
「構わない。夕庵も爽籟や楓、柊木といた方が有意義だろうからな。夕庵、今回は不死川の発した言葉が発端だ。楓と柊木を諌めるのではなく寄り添ってやってくれ」
「任セテクレ」
小さく頷き返してきた夕庵の頭を撫でてやり実弥を促す。
「さっさと行って来い。……泣かせてやるなよ」
「分かってる。悪ィな、ちょっくら行ってくるわ。会議が始まるまでには戻る」
小芭内に背を向けたかと思うと、『殺』と染め入れられた羽織はすでに門の近くまで遠のいていた。
「爽籟、金魚の街に先に行って風音たちを探しててくれ。見つけ次第宿に誘導してそこで待機だ」
「分カッタ!」
例の街まで爽籟と実弥が到着するまであと少し。
そして珍妙な組み合わせの御一行を目にするのもあと少しである。