第19章 お薬と金色
あれから数日経過し、本日は実弥が柱合会議で本部である産屋敷邸へ赴いている。
その間、風音は自宅にて家族たちとお留守番だ。
実弥が帰ってきてすぐに夕餉にありつけるように下拵えを終わらせ日課である基礎鍛錬も終わり、今はサチを連れて少し遠くにある河原までお散歩中である。
「今日は実弥君がいなくて少し寂しいけど、お散歩するのは気持ちいいし楽しいね。河原に着いたら何しよっか?木の枝投げてみる?それとも一緒にお昼寝する?」
「ワゥッワゥッ」
「なるほど!じゃあ今日は一緒にお昼寝だね!サッちゃん居てくれたら寝過ごさないから助かるよ。お顔舐めて起こしてくれるし」
何かこの一人と一匹には通ずるものがあるのだろう。
互いの意思を正確に読み取り会話を行い、満足気に足取り軽く河原へと向かっていく。
「それにしても楓ちゃん、朝急に出てったきり帰ってこないね。爽籟君と仲良しだから、一緒に本部で実弥君のこと待ってるのかな?……皆のこと考えてると会いたくなってきちゃった。お昼寝終わったら、少し足を伸ばしてお迎えに」
「風音サン!今カラ本部ニ一緒ニ来テクダサイ!本日、風音サンノ柱就任ノ儀ヲ執リ行ウトノコトデス!」
噂をすれば何とやら……
しかし噂をしていた楓が持ち帰った話は衝撃的なものだった。
「え?!私、皆さんに認めてもらえたの?!それは……もちろん伺わせていただくけれど……サッちゃんが……」
冷や汗を流してサチを見つめる風音。
どうしたの?と小首を傾げて風音を見つめるサチ。
そしてこの状況をどう打開しようかと、風音の肩に降り立ち頭を悩ませる楓。
サチを置いてなどいけるはずもなく、だからと言って一度屋敷に戻っていては時間を大幅に使ってしまう。
しばらく一人と一匹と一羽で考えた結果……
「サッちゃん、しっかり私の体にしがみついてて。……認めていただいたからには一秒でも早く到着する必要があるの。楓ちゃん!どんな道でも大丈夫、金魚の街まで最短の道順を案内して欲しい!お願いします!」
「サチサンヲ抱エテ走ルノデスカ?!……カシコマリマシタ、私モ今日カラ柱ノ鎹鴉デス!風音サンノ疲レガ最小限ニ抑エラレ、且ツ最短ノ道デ先導シマス!着イテ来テクダサイ!」
こうして珍妙な組み合わせの御一行が空と地の疾走を開始した。