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涼風の残響【鬼滅の刃】

第19章 お薬と金色


何故か瞳を潤ませてしまった風音に苦笑いを零し頬を撫でてやる。

「俺の個人的な願いだ。風音個人に俺個人からの願いなら頭を下げるのが道理だろ。……泣かせるつもりなかったんだがなァ。風音、感謝する」

ふわりと柔らかな笑みを実弥に向けられた途端、胸が締め付けられる感覚に陥り涙が頬を伝った。

先ほどの悲しみを含んだ実弥の表情は、自分の願いが風音にとって辛い光景を見せてしまうことになるからだった。

きっと風音を柱に……と考え始めた頃から思い悩んでいたに違いない。
そう思うと実弥に対する申し訳なさや自分に向けてくれる優しさが愛おしく、様々な感情が胸の中で入り乱れ涙が止まらない。

「感謝なら私の方が師範にたくさんしてます。珍妙な力を持ってる私を拒まず受け入れてくださった。それだけでなく根気強く私を導きここまで育ててくれました。この力は私だけのものでなく鬼殺隊のものです。存分に使わせていただきたく思います」

涙は流れたままなのにキリッとした表情になった風音に溜め息を一つ。

「継子を途中で放り出すはずねェだろ。風音、分かってると思うが一人の時に見ようとすんなよ。見るのはお前が柱になって、柱合会議に参加する時だけだ。柱全員に見えた先を送れ」

へにょん。
分かりやすく風音の眉が下がる。

ある程度そうなるだろうなと思っていたのだろうが、実際に実弥に言われてしまうと抵抗があるらしい。

「私だけが見て言葉で伝えるのはダメですか?だってあんな酷い光景が幾つもあったとして、師範や皆さんが悲しむお顔は見たくありません。総力戦なら……もしかするとたくさんの人が亡くなってしまうかもしれない。その中に柱の方々が含まれていたら……ご自身の死に顔を見ることになるんですよ?」

「言葉だけだと伝わらねぇことも多いだろ。それにもしテメェの死に顔を拝むことになったとしても、それなりの覚悟でアイツらも柱やってんだ。死に顔見たくねぇからって、お前一人に見せて自分たちは見ねェなんて言うはずあると思うか?」
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