第19章 お薬と金色
「勇さんが……知りませんでした」
「知らなかったのかよ。お前が塵屑野郎に襲われた帰りに世話なった、藤の花の家紋の家で立花が誇らしげに言ってたぜ?まァ、それはいいとしてだな。一つ目は戦闘力、統率力どっちも申し分ねェ」
実弥たち柱だけでなく一般剣士である勇や他の剣士たちが自分をここまで見守り育ててくれたのだと思うと嬉しく、また尊敬する師範である実弥に戦闘力及び統率力を認めて貰えたことが嬉しく、思わず表情が綻びそうになった。
しかしまだ重要な話の途中なので、緩みそうだった頬を引き締めて居住まいを再度整えて実弥と向き合う。
「ありがとうございます。それで……その、二つ目の理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
風音の問い掛けに僅かに実弥の目が細まった。
悲しみを含めた言い淀んでいるような表情に首を傾げると、実弥は一度畳に視線を落としてから、しっかりと風音を見据えて答える。
「風音、お前の能力が必要不可欠だ。恐らく近いうちに鬼殺隊と鬼とで総力戦が始まる。お前と馬鹿弟が殺られちまう先を見たろ?恐らくそれは総力戦の真っ只中の光景だ……本当なら風音が傷付くような光景は見せたくねェんだが……」
確かに人が亡くなってしまう先を見るのは風音だって辛い。
しかし風音が鬼殺隊に入った一つの理由が、忌み嫌われていたこの力で尊い人たちを救いたいと思ったからである。
自分が見ることによって人を救えるなら本望と今でも思っている。
それを伝えようと実弥の手を握ろうとした瞬間、風音の動きはピタリと止まった。
「柊木風音さん、貴女の能力をお借りしたい。鬼を滅するため、俺たち鬼殺隊に力をお貸しください」
実弥が頭を深く下げたからだ。
目の前で何が起こっているのか。
一瞬脳内での処理が追い付かず固まったが、風音は慌てて実弥の手を取り頭を上げてもらった。
「頭なんて下げないでください!この力は元より使わせていただく予定でした!私も鬼殺隊剣士です!鬼を滅したい気持ちは皆さんと同じです!こちらこそ……鬼を滅するためにお力添えさせていただきたく思います。どうか……どうかお力添えさせてください」