第19章 お薬と金色
「風音、ここに座れ。お前を柱に推薦する理由話してやる」
何事もなく警備を終え不死川邸へ帰宅すると、二人の帰りを待ちわびていたサチから熱烈な歓迎を受けた。
それはもう熱烈過ぎて顔中サチのヨダレだらけになるくらいに熱烈なものだ。
警備から帰る度に毎度毎度こうなるわけだが、いい子でお留守番していたサチに叱り付けるなど二人に出来るわけがない。
ひとしきりサチが満足するまでヨダレだらけにしてもらってから、風呂へと入り就寝につく。
……ヒイ、ラギ、サチと共に。
そして昼過ぎに目を覚まし朝餉兼昼餉を二人で仲良く作り、今日は村上にも振る舞って見送る。
ようやく落ち着き一呼吸置いたところで、実弥から風音へ。
約束していた話をすることとなったのだ。
「はい」
隊服ではなく着物を気流していても実弥が真剣な眼差しとなると隊服時と変わらないほどに凛としており、前に腰を下ろした風音の背筋も自然とピンと伸びる。
そこまで緊張する必要ない……と実弥は言ってやりたかったが、鬼殺隊の剣士の上に立つことを強制するのだからと何も言わずに口を開いた。
「まず単純に戦闘力、統率力。呼ばれ方は兎も角としてだ……いくらお前の出す指示が的確だと言っても、弱けりゃ誰も従わねェ。強くても一剣士の指示なんぞ従う義理なんてねェから、普通は従わねェ……はずなんだが。何でかお前の指示に大半の剣士は従っちまうんだってなァ?」
考えたこともなかった今までの剣士たちの言動に目を見開き驚く。
確かに合同任務でこっそり助言してみたり指示を出したりしていたが、不快な表情をされたことも反発されたことも特になかった。
「私……そんなものなのだと思っていました。私も他の方に指示をいただけば従っていましたし。……もしかして私が助言してすぐ鬼に突っ込んで行ってたので反論する余地すらなかった……のかも?」
「あ"ぁ"……そりゃ指示出した奴が先陣切れば従わざるを得なかったろうなァ。んでそれを繰り返すうちにお前の指示が的確だって、立花を起点に広がったってわけだ」
噂の発生源が誰だったのか知らなかった風音は衝撃の事実に目を丸くして息を飲んだ。