第19章 お薬と金色
そんな静寂の中で聞こえた実弥の言葉を何度も頭の中で反芻させ、涙の止まらない瞳を声の主の方へと向ける。
するとそこには穏やかながらも真剣な眼差しの師範の顔。
返事を聞くまで視線を外さないと言っているようで、風音は纏まらないながらも言葉をゆっくり紡いでいく。
「私は……まだまだ師範に及びません。それに鬼に狙われているので夜の警備すらままならない状態です。こんな私を……柱の皆さんは認めてくださるでしょうか?私は……剣士の方々のお手本になれる存在でしょうか?」
出てくるのは疑問ばかり。
お任せ下さいと言いたいのに、それとは裏腹に出てくるのは不安な事柄についてばかり。
しかしこんな言葉が風音から出てくるなど実弥にはお見通しだ。
「相変わらず自信ねェなァ。お前、今まで鬼を何体倒してきた?合同任務で何人の剣士助けてきた?柱でもねェのに剣士たちから何て呼ばれてんだ?今まで剣士やってきて、お前みたいに奇跡の女剣士なんて言われる剣士見たことねェわ」
((奇跡の女剣士?!何だそれ?!))
男たちは風音が何故そう呼ばれてるのか知らないので、胸の中で混乱状態且つ興奮状態である。
だが大切な話をしているであろう二人に茶々など入れられるはずもないので、ソワソワ動きだしそうな体を懸命に引き止めているところだ。
それに気付いている実弥は小さく溜め息を零し、風音はその溜め息に肩をビクつかせて慌てて答えた。
「倒した鬼の数も剣士の方々のお力になれたであろう数も……覚えていません!奇跡の……というのは私の力があってこそのものです!でもそれは師範が根気強く能力向上にお付き合いくださったからで……師範!師範は凄いです!無知も無知過ぎる私をよくぞここまで……」
何故か自分に恐れ戦きガクガク震える風音に苦笑いを零し、頭をクシャリと撫でて解放してやった。
「俺の根気と辛抱強さ舐めんなよ。他の柱にお前の戦闘姿見て肝が冷やされたって何回言われたと思ってやがる。……まァ俺の戦闘方法見て育っちまったから、半分は俺の責任だが」
震えを止めて見つめ返し続けてくる風音に一呼吸置いて続ける。
「まだアイツらには何も言ってねェ。次の会議で俺が推薦する。理由は帰ってから話してやるから、さっきも言ったがしっかり考えて答え出せ」