第19章 お薬と金色
「うん……うん!ちゃんと人を助けてくれてた……実弥君、私……今すごく嬉しい。だって……こんなお話、聞くことなんて叶わないって思ってたから……ありがとうございます。柊木功介は……私の父なんです。今日貴方にお会い出来て……本当に嬉しく思います」
まさかの風音の告白に男たちが動きを止めた一瞬後、これまた思いもよらぬ歓声が辺り一帯に響き渡った。
お前の親の命の恩人の娘と会えるとか奇跡じゃねぇか
でも泣いてしまった
誰か慰めろ……って兄さんが慰めるか!
てか何でお前悪事に手染めようとしてたんだよ
とりあえず目出度い
実弥の胸の中で涙を流す風音が思わず顔を上げて笑顔になってしまうほど、男たちの喜びようは凄いものだった。
「おぉ……すげぇ喜びようだなァ。風音、お前の父ちゃんはちゃんと命を助けて繋げてた。立派に鬼殺隊の剣士勤めてたじゃねェか!父ちゃんがあと一歩のとこで逃しちまった柱への道、お前が継いじまえ!」
「うん!柱に……え?!柱?!」
驚き慌てる風音をふわりと両腕で抱え上げると、プラプラ揺れながらアワアワと忙しなく視線を巡らせている。
「姐さんが柱になるらしいぞ!柱が何か分かんないけど!」
「お前、柱って言うくらいだから偉い人なんだろ!」
次々と野次が飛ばされる中、風音は困ったように眉を下げて頬を両手で包んだ後……実弥を求めて両腕を伸ばした。
それを拒むはずもなく、実弥は望まれたまま風音を下ろして胸の中に誘ってやった。
「コイツの父ちゃんはもうこの世にいねぇんだ。道半ばで想いを絶たれ、コイツの幸せを願って消えちまった。楓からお前らにコイツが絡まれてるって聞いた時はぶちのめしてやるって思ったが……今は感謝してる。…… 風音、俺が冗談や勢いで鬼殺隊の話ししねぇって知ってるよなァ?ちゃんと理由も話してやるから、お前もしっかり考えて答え出せ」
先ほど風音は男たちに『一人ぼっちになった私を師範が拾って……』と話していたので、この世にはもういないのだと察していた。
それが実弥の言葉で確信に変わり、喧騒から一変……辺りは静寂に包まれる。