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涼風の残響【鬼滅の刃】

第19章 お薬と金色


実弥の言いつけ通り男たちの手に触れずに、一人一人傷薬と包帯を手渡しながら無意識に笑顔も送っていると、締りの無くなっていた雰囲気が更に柔らかな雰囲気につつまれていった。

「姐さん!薬ありがとうございます!さっきから鬼とか何とか言ってますが、何のお仕事してるんですか?そっちの兄さんも姐さんも刀持ってるでしょ?危ない仕事?」

「姐さん……?!えっと、信じられないかもしれませんが、私たちは人を喰べる鬼を倒すお仕事をしています。だからね、夜はご自身の身を守るためにもあまり出歩かないで。私たちが鬼を滅殺するまで用心……して下さい」

お伽噺のような信じられない話、信じてもらえないだろうなと自信なさげにだんだん小さくなる言葉や風音の下がる眉に、実弥は穏やかに微笑んで頭を撫でてやる。
それはまるで励ますような行動だったが、二人の言動は杞憂に終わった。

「分かりました!俺たち、鬼は見たことないけど……姐さんと兄さんがわざわざ嘘つくとは思えないですし!ちなみに何て組織なんですか?」

夜な夜な女性を襲おうとしていた輩たちなのにやたらと素直である。
そしてそれに加え好奇心旺盛で実弥は思わず溜め息をついた。

「鬼に会ったことねェならこっちに深く関わんな。踏み込んじまったら命に関わんぞ……鬼に関わりなく生活送れんならそれに越したことはねェ。お前らは俺たちが守ってやるから……」

「そんなことを言わずに!自業自得で怪我した俺らを放置せず、兄さんたちはこうして助けてくれた!その人たちが何て組織で働いてるかくらい知りたいんだ!それに……姐さんすっげぇ可愛いのに強いから興味あるんです!」

初めの言葉が一割、最後の言葉が九割。
この男たちが実弥たちに興味を持った要因は恐らくこれだろう。

無意識に笑顔を振り撒き、つい先ほどまでその笑顔のままだった風音に実弥を含めた全員が視線を向けると、実弥の予想通り顔を真っ赤にして俯いてしまっていた。
そんな中でも伝えたいことはしっかり伝える風音に全員が耳を傾ける。

「可愛いことは……ないと思うんですけれど。鬼と戦う術を身につけさせてくれたのは全て師範なんです。師範は鬼によって一人ぼっちになった私を拾って育ててくれるような、強く優しい人なんです。ここの組織はそんな人たちばっかりで、私は随分と心を救われました」
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