第19章 お薬と金色
「ち、誓います!今後一切女を襲わないって誓います!だから手を離してくれ!」
ようやく観念した男は無事に腕を解放してもらえた。
そして目の前には未だに険しい表情をしている実弥とは反対に、驚くほど穏やかに微笑みかけてくれている風音がいた。
「痛い思いをさせてしまいすみませんでした。お約束して下さってありがとうございます。本当は私も手当てを手伝いたかったのですが、師範自ら貴方たちの手当てをして下さるようです。さ、体を起こして……」
風音が男を起き上がらせてやろうと手を差し伸べるが、その手は実弥によって掴まれ阻止されるだけでなく、ひょいと抱え上げられあっという間に実弥の背後に隠されてしまった。
「コイツに触れようとすんなァ。自業自得でついた傷なんかテメェらでどうにかしやがれ。ただコイツの厚意を無下にも出来ねェから傷薬くらいは与えてやる。……何ボサっとしてやがんだァ!さっさと起き上がらねェか!」
(あれ?なんか師範も師範で弟子のこと大好きなの?)
聞けるはずもない疑問はその場に倒れていた男たち全員の胸の中でこっそり響き、全員が生暖かい視線を二人に向けながらニコニコと起き上がる。
そして弟子である風音は師範である実弥の言葉に嬉しそうに満面の笑みを浮かべ、頬を紅潮させながら実弥の背中に抱きつきにいってしまった。
その様が更に男たちの生暖かい視線に拍車をかけ、実弥はなんとも居心地悪そうである。
しかし自分の言葉に喜び、それを体現した風音の暖かさを引き離すなどする気になれず、振り返って肩を抱き寄せてやった。
「お前が笑うと締まりなくなっちまうなァ……別にいいけどよ。風音、予備の薬と包帯あんなら渡してやれ。ただしアイツらの手に触れんなよ?いいな?」
「だって実弥君の言葉が嬉し過ぎて!フフッ、もちろんお薬も包帯もありますよ?ちょっと待って下さいね」
肩を抱き寄せてもらいながら鞄の中に手を突っ込み、次々と薬や包帯を取り出して、いつの間にか近くに来ていた男たちや目の前にいる男に手渡していく。
「よければお薬を持って帰ってください。何かで怪我をした時に塗ってもらえば、すぐに良くなると思いますので」