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涼風の残響【鬼滅の刃】

第19章 お薬と金色


それでも構わないという意思表示として無言で手を差し出されたので、風音は逆らうことなく実弥の手のひらにちょこんと容器を置き、様子を伺うことにした。

実弥は首を傾げる風音を横目に確認すると、容器を握り締めて偶然一番近くで地面に倒れていた男の前にしゃがみこむ。

「コイツが甘過ぎる女でよかったなァ。自分を襲おうとしたお前らに傷薬くれるんだってよ。これに懲りたら同じこと繰り返すんじゃねェぞ。俺はほぼ毎日この街の巡回やってんだ。……俺の言ってる意味分かるよなァ?」

穏やかな声音とは裏腹に表情は険しく、睨みつけられている男は頷くしか残された道はなかったのだが……

「この女を殺されたくなかったら……」

この件から手を引け。

地面に叩き付けられても懲りず、まだ余力のあった別の男が短刀を手に立ち上がり、甘過ぎると言われた隙だらけの風音の背後から拘束しようとした。

しかし細い首に回そうとした腕は空を切り、目と鼻の先にいたはずの美しい羽織を羽織った少女は忽然と姿を消して、男の目に映ったのはやけに自信に満ちた実弥の表情。

「馬鹿が、俺の弟子が人間の男なんぞに遅れとるわけねぇだろ」

「何を……がっ?!」

何を意味の分からないことを言っているのかと言う暇すら与えられず、男は再び地面に叩き付けられた。
しかも今度は腕を背で拘束されているので身動きすら取れない状態である。

「もう一度言います。これに懲りたら同じことを繰り返さないでください。私もほぼ毎日この街に巡回に訪れます。次に同じことをしている現場を見つけ次第、両腕の骨を仲違いさせますからね?嘘ではありません、本気ですよ」

男の返事を聞くまで拘束を緩めないどころか、是と言うまで拘束する力を徐々に強めていくつもりだ。
このままではまず肩の関節を外され……その後はいくら考え無しに動いた男であっても、自分の腕の骨がどうなるか分かる。

「わ、分かった!分かったから勘弁してくれ!いっ?!いででで!」

「ちゃんと答えてください。何が分かったんですか?」

言質を取るまで許してくれそうにない、見た目によらず好戦的で力の強い少女に逆らうなど出来るはずもない。
いつの間にか目の前にやって来て睨み付けてくる師範は、この弟子より強く自分が適うはずもないと理解したからだ。
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