第18章 境内と家族
風音たちが実弥たちをお出迎えして驚いたこと。
帰りに隠たちも合流したことにより、出掛けて行った時より遥かに大人数になっていたことである。
どうにかこうにか全員で手分けして夕餉の準備を終わらせ、少し早めの夕餉を始める寸前、ギリギリのところでしのぶも合流を果たした。
かつてないほどの大人数で夕餉を囲み腹もある程度満たされたところで、風音と実弥は別室に移動して先を見る準備をしていた。
「実弥君、皆さんがここに居るということは、やっぱり皆さん任務入ってないのかな?」
「入ってねェんだろうなァ。俺も今のところ今日だけじゃなく明日も明後日も入ってねェ。どうなってやがる……今までこんなことはなかったぞ」
やはり実弥も任務が入っていなかった。
しかも明日も明後日も柱に任務が入っていないなど異常事態である。
他の柱たちには聞いてみないと分からないが、実弥に任務が入っていないということは皆同じようなもののように思える。
それもこれも先を見ればある程度状況が掴める……そう思い直して風音は実弥の手を握り締めた。
「ワンちゃんのこともあるし、任務のことも含めて先を見てみます。実弥君にも流すから……準備はいい?」
「ん、あぁ。俺はいつでも問題ねェ。ただお前に無理がない程度にしとけよ?別に今日のうちに全て見る必要ねェからな」
握っていた手を握りしめ返してくれた実弥に笑顔で頷き、まずは近い未来から探っていく。
すると判明したのは一ヶ月、実弥に一切任務が入らず、日々の警備だけになっているということだった。
もちろん風音にも任務は入っていないようで、実弥と共に警備に赴いたり、他の柱と警備に赴いたりしていた。
「任務、入ってないね。もう少し先も見てみよっか。二ヶ月先なら何か動きがあるかもしれないし」
「もう今日は……」
先を見る時の独特な光を放つ風音の瞳を片手で覆い、これ以上見るなと示す。
しかし先を見るつもりだった風音の気が削がれ、二ヶ月先よりも遥か先の先が風音の頭に流れ込んできてしまった。
油断していた風音を襲ったのは、内臓がまろび出るのでは思うほどの腹の痛み。
それと右の中指と人差し指がちぎれ落ちるのでは思うほどの痛みだった。