第18章 境内と家族
風音と蜜璃が首を傾げながらも調理を進めている頃、買い出し係である男の柱と村上は両手に大量の荷物を抱え歩いていた。
「それにしても凄まじい量だな!柱全員の夕餉を作るとなると、こうも食材が必要になるとは思いもしなかったぞ!」
「ほぼお前と甘露寺の分だろうがァ……お前ら一体どういうつもりだァ?胡蝶以外柱全員揃っちまってんぞ」
ということで、継子の見舞い、面倒を見ている玄弥の見舞いを終えた杏寿郎と行冥も街中で偶然合流し、慌てて食材をさらに追加購入して今に至る。
「まぁ俺はつい先日鬼殺隊抜けたから柱じゃねぇけどな!ところで煉獄、お前の継子たちは連れてこなかったのかよ?我妻と嘴平は怪我してなかったろ?」
「あぁ!誘ってはみたのだが、黄色い少年が柱の集結した場所に行くのは嫌だと泣いてしまってな!猪頭少年は竈門少年と黄色い少年と一緒にいたいとのことなので、こうして一人で赴いた次第だ!それにしても宇髄、君が柱でなくなったのは少し物悲しいな」
そして未だに実弥の疑問は解けぬまま……
いつまでも話が横道に逸れる状況にもどかしさを感じながら小さく息をつき、前を機嫌よく歩くイヌを眺めてみた。
……もちろんそれで疑問が解けるわけないのだが、溜め息をこぼす実弥へ行冥がぽつりぽつりと話してくれた。
「皆、不死川たちが発現させた痣のことが気になっているのだ。後日お館様の元へ集まるが、それまでにある程度情報を整理しておきたい」
「そうですか……俺は大丈夫ですけど、風音は途中で寝ちまうかもしれませんよ?怪我してますし、泣き疲れてるはずなんで」
今のところは元気に蜜璃と料理を作っていると思われるが、いつ眠ってしまってもおかしくないくらいに疲れはあるはず。
しかも実弥が帰宅したら先を見ると約束を交わしているので、更に眠気は追加されると予測される。
しかし行冥はニコリと穏やかに微笑んだ。
「こちらが無理を言って邪魔させてもらうのだ。柊木は疲れたら休んでもらって構わない。さぁ、早く帰ってやろう。二人が首を長くして帰りを待ってくれているはずだからな」
首を長くして待ってるか?と疑問に思ったものの、帰れば笑顔で玄関まで迎えに出てくる姿が当たり前のように浮かび、ひっそり顔を綻ばせて家路を急いだ。