第18章 境内と家族
優れた聴力で風音か涙を流していた理由を知っていた天元から義勇が説明を受け、改めてシナへと皆で揃って手を合わせた。
それからは食料追加のため男全員が散歩も兼ねてイヌと共に買い出しへと再度街へ赴き、風音と蜜璃は夕餉の支度を行っている。
「女の子同士でお料理なんて楽しいわ!後でしのぶちゃんも合流するみたいだから、女の子同士で一緒にお風呂も入りたいね!」
米を炊き心地よい音を響かせながら二人仲良く食材を切っていると、風音の視界の端に機嫌良く揺れる桃色の髪が映る。
見ているだけで元気になれるような色や動きに、風音の笑みが更に深まった。
「はい!まだまだ夜まで時間はありますし、目一杯楽しみましょ!疲れたら言ってくださいね?私、今のところ任務が入ってなくて非番なんです。何でもお任せあれです!」
「あら?そうなの?私も今日はまだ任務入ってないのよ。伊黒さんも非番だって言ってたのだけど……不死川さんは任務入ってる?」
一般剣士である風音はともかくとして柱二人も非番。
更に実弥に関しても今晩任務が入っているという話は聞いていない。
「実弥君も任務は入っていない……と思います。今までこんな事ありましたか?」
「どうだったかしら?でもしのぶちゃんは後で合流するって言ってたし、煉獄さんや悲鳴嶼さんも後で来るって伊黒さんから聞いてるの。あら?柱全員が任務がないって今までなかったかもしれないわ」
今までなかったことがある日突然現実となり、二人は顔を見合わせて首を傾げた。
基本的に柱は任務やら救援要請やらでほぼ毎日鬼狩りを行っている。
それは風柱の継子である風音もよく知っていることだ。
非番なんて一ヶ月に多くて数回。
鬼の出現状況によっては非番がない月もあるくらいである。
「うーん……何が起こっているんでしょう?実弥君が帰ってきたら先を見せてもらうので、それで何か分かるかもしれません!禰豆子さん以外の鬼が滅んでいてくれたらいいですけど……」
「そうねぇ、私もそうであってほしいと思うわ!何が起こっているのかは分からないけれど……無茶はしないでね?風音ちゃんには笑顔でいて欲しいの」
優しい蜜璃を心配させるまい。
そう心に誓って頷き返し、風音は蜜璃と共に調理の続きを手際よく行なっていった。