第18章 境内と家族
「クソ……おい、風音。こっち座れ……あぁ、イヌ連れたままで構わねェから」
蜜璃に撫でられ義勇に羽織を握られ、胸の中には相変わらず大人しくしている白いイヌ。
実弥に呼ばれたことにより二人の手は離れたがイヌはそうもいかない。
どうしたものかと悩んでいるとイヌごと来てもいいとお許しを得たので、風音は抱っこしたまま実弥に背を預けてちょこんと座った。
「で、何でお前らは俺ん家に集合してんだよ。飯食いに来たってわけでもねェだろ?てか今まで来たことねェヤツまで来やがって……」
柱がそれぞれに目的があってここに来ているのだろうが、この場にいる柱全員はそれどころではない。
実弥は何事も変わったことはないというように話を進めている。
しかし風音の胸の中には見知らぬ白いイヌがいるのだ。
そちらに全意識が持っていかれて本来ここに来た理由が弾け飛びそうな状態になっている。
「いやいや、それよりそのイヌどうしたのよ?嬢ちゃんが大切そうに抱っこしてるイヌ……二人が拾ってきたのか?」
和み具合からすると随分前から不死川邸にて生活を共にしていたのではないか?と思えるほどに和んでいる不思議なイヌ。
だが紛れもなく白い不思議なイヌは今日保護してきたイヌである。
「それよりじゃねェだろ……はァ、コイツは村上たち隠が手引きして俺ん家に越してきたイヌだ。引き取り手が見つかるまでうちで……預かるって話になってんだが……なんだァ?すっげぇ風音にしがみついちまった」
引き取り手が……という言葉を実弥が言った瞬間、イヌは風音の足の上でくるりと反転し、まるで離れたくないというように風音の体にしがみついてしまった。
風音としても何とも癒され嬉しい行動だが、自分たちの職業柄ずっと生活を共にしてあげることは出来ないので、お迎えしたい!と実弥に口走りそうになったのをぐっと堪えてふわふわに顔をうずめる。
「実弥君が優しいからこのお家にいたいよね。でも私たちは任務があって、毎日のご飯すらまともにあげることが出来ない……ごめんね」
「ワゥ……」
何とも胸を締め付けられるイヌの一声に全員が気まずい雰囲気に覆われた……のだが、義勇はその鳴き声に怯えるように体をビクリと震わせた。