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涼風の残響【鬼滅の刃】

第18章 境内と家族


実弥の指摘が的を得ていたのだろう。
隠の体がビクッと跳ね上がり、実弥から視線を逸らして助けを求めるように風音に潤んだ瞳を向ける。

隠の顔は目から下を布で覆っていて口元は全く見えない。
つまり目だけが感情を表す唯一なのだが、こうも目だけで今の心境を伝えられるものかと思えるほどに潤んでいる。

実弥に怯えたことのない風音に隠の気持ちは分かってやれないものの、家族たちのお世話をつとめてくれ、更にはシナが亡くなったことで落ち込んだ風音を励ましてくれた隠だ。
放っておくことなど出来るわけがない。

風音は涙を腕で拭い取って笑顔を向ける。

「実弥君も私も怒ってないですよ!ただ実弥君のお家で預かるに当たり、幾つかお願いしたいことがあるんです。この子たちのお世話のお礼も兼ねて、ぜひ泊まっていってください!ご飯も一緒に食べましょ!」

風音は笑顔。
実弥は……怒ってないとの話だったはずなのに眼光が鋭いように見える。
しかし満面の笑みの少女からのお誘いを断るなど出来ない……

「えっと……ではお言葉に甘えさせていただいて。でも後で他の隠も何人かここに合流予定なんです。何て説明すれば……」

「んなの全員泊まりゃいいだけの話だろ。部屋は余ってんだ、好きに使え。……言っとくが男と女で部屋は分けろよ?なんか余計なことしてみろ、鬼殺隊から追い出してやるからなァ」

何故だろう。
隠はお礼にとお誘いいただいたのに、するつもりのないことをすれば追い出してやると言われてしまった。

だが余計なことをしない限り穏やかな時間が約束されている……はずなので、しっかりと実弥に頷き返して立ち上がった。

「俺たち隠たちは柱に何度も命を救われてます。そんな恩を仇で返すような真似なんて鬼を前にしても絶対にしません。では俺は食料の買い出しに行ってきます!……風柱様と柊木さんはシナを弔ってあげて下さい」

最期は誰よりも長く時間を共にした人たちだけで……と気を利かせてくれた隠は、二人の返事を聞く前に玄関へと足を向けた。

「「村上」さん」

隠……村上は二人から同時に名前を呼ばれて驚き振り返る。
すると更に驚く光景が映し出された。

風柱とその継子が立ち上がり、自分に向かって深く頭を下げていたのだ。
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