第18章 境内と家族
「隠の人がこの子と巡り合わせてくれたのなら……ね。うん、考えすぎても良くないか!予定立てやすいように、いつ任務が入るかだけ見せてもらってもいい?どなたかにお世話をお願いしないといけないなら、事前に準備してた方がいいでしょ?」
イヌのお世話と言っても多岐にわたる。
ご飯はもちろん散歩や病気になった際の対処等々……
ご飯の用意は問題ない。
実弥は柱であるし、実弥に拾ってもらった当初はほぼ無一文だった風音も今や甲である。
食い扶持が一人……一匹増えたとしても問題なく養うことができるようになったからだ。
そうなると後の問題はご飯を与えることと散歩や有事の際の対処。
それらの問題を解決するために風音は実弥の手に自分の手を重ね、先を見る許可が出るのを静かに待った。
「あぁ……見るのは構わねェし有難ェが……家に帰ってからな。お前も怪我してんだァ、見てる途中で気分悪くなってもいけねェだろ」
不死川邸に帰ってからという条件付きだが無事に許可をいただけた。
確かに今先を見て万が一何かあったら実弥への負担が増えるだけなので、心配そうに少し眉根を寄せる実弥に頷いた。
「分かった!実弥君、気にかけてくれてありがとう。優しい実弥君の事だから聞くのも野暮だと思うんだけど……その子抱っこして帰るの?」
「別に普通だろ。……いや、あれだ。途中ではぐれてもいけねェし、どっかで怪我しても……よくねェからな」
と言いつつイヌの首元に顔を埋もれさせているので、抱き心地が滅法気に入ったと見える。
「フフッ、そうだね。保護するなら責任持たなきゃだもんね!腕が疲れたらいつでも言ってね?私が抱っこして歩くから」
ふわふわに包まれ満足そうにしている実弥が途中で音を上げるとは思えないが、風音としてもあの心地よいふわふわに包まれたい願望がある。
もし……万が一抱っこさせて貰えるのならばさせて欲しいのだ。
……そう言った感情を本人は顔に出していないと思いこんでいるものの、感情ダダ漏れの表情から実弥は風音の心情などお見通し。
うずうずする風音の手を笑顔で取り境内の外へと向かって歩いていく。
「後で交代してくれ」
「うん!もちろん!……それにしても大人しい子だね」
こうして二人は終始大人しいイヌを交代で抱っこしながら家路を急いだのであった。