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涼風の残響【鬼滅の刃】

第18章 境内と家族


神様へと切に切に願っていたのは鬼殺隊全員の幸せだった。
誰かのためだけの幸せを願っていたならば呆れていたかもしれないが、自分の幸せに繋がる願いを願ったのならばと抱き締め直し、神がいると思われる場所へ視線を動かした。

それにつられて風音も視線をそこに移してもう一度頭を下げると……

「ワンッ!」

馴染みのない声に体がビクリと震える。
しかし驚いたのは風音だけ。
実弥は声の主が誰か分かっているようで、慌てることなく風音を伴って後ろを振り返った。

「実弥君?ワンッて聞こえたけれど……」

「あぁ、すぐ来る」

伴われて体を向けた先には何も……いや、境内の途中から続いている森の中を白い何かがこちらに向かって動いているのがチラチラと風音の視界に映る。
目を凝らさなくてもこちらに向かってくる速度が凄まじいので、その白い何かの正体はすぐに判明し、風音の顔が眩しいくらいの笑顔で満たされた。

そしてしゃがみこみ手を広げた風音の先に何が待ち受けているのか予測した実弥は、すかさず風音の背後に跪いて体を支えるように肩に手を添える。

「ワンちゃん!わぁ、生き物ってワンちゃんだったんだ!おいで……わふっ……」

「……想像以上の事態になってんなァ。体全部漏れなくコイツに包み込まれてんじゃねェか」

基本的に風音は話してる途中で烏に宿り木にされているが、それは烏だけに限らず生き物全般に適用されるらしい。
しかも今回は立ち上がればそれなりの大きさのイヌなので、飛びつかれた風音は頭からすっぽり白いふわふわに覆われていることになる。

「…………」

「ハハッ!おら、固まっちまってるから離してやれ。いい子にしたら握り飯やる」

風音の肩の上に置かれた白いふわふわな手をポンと撫でると、白いイヌは実弥に何を言われたのか理解したように、風音から離れてちょこんといい子にお座り。

「よし。風音、大丈夫かァ?」

後ろから風音の顔を覗き込むと顔に白い毛がふわふわと漂っていたので、羽織で拭い取ってやる。
すると我に返ったのか風音は動きを取り戻し、頬を紅潮させた笑顔で大きく頷いた。
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