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涼風の残響【鬼滅の刃】

第18章 境内と家族


長い長い階段であっても、日々鬼狩りに駆けずり回っている二人からすれば登り切るのは容易いこと。
無事に階段を登りきり鳥居をくぐって境内に入ると、不思議と空気が澄んでいるように感じ、二人して大きく息を吸い込んだ。

「厳かってこういう雰囲気のことを言うんだろうね。空気が凛としてて、実弥君と真剣に向き合ってる時みたいにシャンとした気持ちになる」

「……どんな例えだよ。それ、俺に怒鳴られて悄気返ろうにも出来ねェから、どうにか自分自身奮い立たせてる時だろうがァ……神様に頭叩かれんぞ」

呆れられているのに、風音はなんでもお見通しな実弥へ満面の笑みを向け、握り締めてくれたままの手を引っ張り手水場へと促す。

「どうせなら実弥君に頭を叩かれたいけどね。フフッ、実弥君と初めての神社参拝!幸せな思い出がまた増えた!さっそく神様にご挨拶しに行こう!まずはお清めから」

変わった願望を持ち、忙しなくちょこちょこ動き回る風音に小さく息をつき、手を引かれるまま望まれるままに足を動かし参拝。

そうして神様へ願い事を終えてチラと横目で風音を見遣ると、真剣な表情で手を合わせ願いを神へ伝えている横顔が実弥の瞳に映し出された。

(そう言えば……コイツの真剣な表情って私生活であんま見ねェなァ。いつも笑ってるから何か新鮮っつぅか……あ"ぁ"、構いてェ!)

自分の体に小さな体を抱き寄せたいと思っても、まだ参拝は終了していない。
モゾモゾと動き出しそうな体を必死に抑え、風音が目を開けるのを待つこと……数十秒。

ようやく願いを終えた風音にならい一礼を終えると、いつも通りの笑顔に戻った風音の体をふわりと抱き寄せた。

「実弥君?どうしたの?」

実弥の胸元から覗く風音の瞳は驚きから真ん丸になっている。
それでも背に腕を回しピタリと体を寄り添わせた風音の頬を撫で小さく首を左右に振った。

「なんでもねェよ。願い、ちゃんと神様に伝えられたのか?」

「うん!私にたくさんの幸せをありがとうございます。これから一年、強く優しい方々がたくさんの幸せに包まれるよう、見守っていて下さい。ってお願いしたよ。実弥君たちが幸せになることが私の幸せだって気付いたからね!」
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