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涼風の残響【鬼滅の刃】

第18章 境内と家族


こうして無事にしのぶの名前を呼び終え、ようやく蝶屋敷を後にした二人は家路をゆっくり歩いている。

「実弥君と出会ってから宝物がたくさん増えて幸せ過ぎる。どうしよう、幸せ過ぎて怖い」

幸せな悩みを幸せそうな表情で呟く風音の手を引き、実弥はいつも蝶屋敷から自宅へ帰る道と違う道に足を向ける。

「幸せならそれに超したことねェだろ。風音、お前生き物嫌いじゃねぇよなァ?」

いつもと違う道に首を傾げていた風音は実弥の突然の質問に更に首を傾げた。

「生き物は好きだよ?禰豆子さんを除く鬼以外の生き物は好きだけど……どうしたの?隠の人たちにお世話をお願いしてる、うちの子たちに関係あるお話?」

現在、不死川邸にて生活を営んでいる家族たちは、二人が刀鍛冶の里に赴くことが決定した際に、どこから聞きつけたのか……数人の隠たちが面倒を見ると名乗りを上げてくれたので、その人たちにお世話をしてもらっている状態である。

特に火急の報せは入らなかったので隠たちに可愛がられているはずだ。
てっきりその子たちの話題かと思ったのだが、実弥は首を左右に振った。

「いや……アイツらの話じゃなくてだな。……まァ着いてくりゃ分かる。あそこの神社入んぞ」

「神社?うん!じゃあ神様にご挨拶しなきゃね。えっと…… 鈴を鳴らしてから二礼二拍手一礼……だったっけ?」

母親と暮らしていた時に教えてもらい、脳内の片隅の引き出しに入れっぱなしだった記憶を引っ張り出し首を傾げながら実弥を見上げると、同じく首を傾げる実弥が瞳に映る。

「あ"ぁ"……俺はあんまそういうこと詳しくねェんだ。手ぇ洗って口を濯ぐってのは知ってんだけどなァ。風音がそう言うならそれで合ってんじゃねェの?」

「実弥君の記憶と私の記憶を繋ぎ合わせると……手水場で手とお口を清めて鈴を鳴らして神様にご挨拶、だね!実弥君がいてくれてよかった。一人だときちんとご挨拶出来ないところだったもん」

本来の目的は別にあるのだが、それとは別のところであっても喜び自分を必要としてくれている少女を眩しそうに目を細めて見つめ、手を握り直して境内へと続く長い階段に足を踏み入れた。
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