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涼風の残響【鬼滅の刃】

第17章 芸術と嘘吐き


顔や腕、足に背中に腹。
全ての手当を終えて残るは三日前に負った頬の怪我だけとなる。

「ほっぺた、随分とよくなりましたね。今日か明日にでも蝶屋敷に行くと思いますが、せっかくなので貼り薬替えておきます」

実弥に殴られ負った怪我の治り具合は良好。
この怪我のように兄弟の仲も良くなればいいのだが、そう上手くいかないもの。

どうしたものかと貼り薬を貼り替えながら考えていると、玄弥から思わず笑みが零れるような言葉が紡ぎ出された。

「この前貰った薬は凄い匂いだったけど、さっき付けてもらった薬はいい匂いだな。目が覚めるような匂い。俺、この匂いすげぇ好きだ」

既視感の覚える薬の匂いに関する玄弥の言葉に風音は笑みを浮かべ、向こうを向いて座っている実弥の肩はピクリと反応した。

「フフッ、そうでしょう?前のお薬の匂いは不評だったから改良したんです。このお薬の匂いと同じ練り香水は今はありませんので、代わりにこのお薬をお持ち下さい。遠くにいても……離れていても近くに感じられるように」

「へ?どう言う……」

意味か?と問い掛けようとしたところで、風音の視線が実弥の背中に向けられた。
暫くその意図が分からなかったものの、居心地悪そうに身を縮こませた実弥の背を見つめ続けるうちに意図が分かり、玄弥の表情がパッと明るくなった。

「あ、ありがとう!そっか……ハハッ!なぁ、風音。この傷薬がなくなったら、また貰いに行ってもいいか?」

初めて見る玄弥の明るい笑顔に大きく頷き返し、幾つか渡そうかと手に握っていた薬の容器を鞄の中へと戻した。

「はい、いつでも取りに来て下さい。擦り傷切り傷、腫れに至るまで効果がありますよ?でも塗り直すのは一日三回まで。それ以上は色素沈着する恐れがあるので控えて下さいね」

回数が決められているならば無闇矢鱈と使用出来ないが、小さいながらも兄との繋がりをもてたことが嬉しいのだろう。
玄弥の顔には明るい笑みが浮かんだままだ。

そしてその笑顔のまま隊服を着直して立ち上がると、風音と実弥に向かって頭を下げた。

「兄ちゃ……風柱様、風音!今日はありがとうございました!また近々薬を頂きに伺わせてもらいます!」
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