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涼風の残響【鬼滅の刃】

第3章 能力と剣士


不穏な言葉を胸の内で呟いて暫く。

本部に到着した実弥は重厚な門をくぐり、中に入ってようやく風音を腕から解放してやった。

薬を作るためとはいえ常中をものにしている風音の体に移動の際の揺れなどに対して負担は全くなかったようで、しっかりと地面に足をつけてキョロキョロと広く美しい庭を見渡している。

「綺麗なところですね。藤の季節じゃないのに藤の花が満開……あれだけあれば藤の解毒剤がいっぱい作れそう。いいなぁ……お薬作りたいな」

「藤の花は鬼が嫌うから本部に植えられてんだ。毒を飲まねぇって約束守れんなら、庭に植えてやる。ここのんを見たけりゃ帰りに嫌ってほど見せてやるから、今は先にお館様に会いに行くぞ。お待たせするわけにはいかねェ」

今までに何度か話題に出ているお館様に会うとは思ってもみなかった風音の心中は穏やかでなくなった。

呑気に藤の花が綺麗だとかお薬作りたいなぁ……と考えていたのに、実弥に手首を掴まれ引っ張られて歩き出した今は目を回しそうなほどに混乱している。

「お、お館様に私がお目通りするんですか?!ちょっと……今更ですけど説明してほしいなぁって思うんですが!私の能力が何か鬼殺隊に害があるんでしょうか?それくらいしか思い当たらない……それに爽籟君は?」

「……お前の父ちゃんの事だァ。爽籟もその事で動いてんだ……分かったら大人しく着いて来い」

父親のことと言われてしまえば大人しく言う通りに着いて行く以外に道はないが、どうして実弥がこうもピリピリしているのか分からない。

(お父さんは任務で死んじゃったはずだけど……爽籟君がお父さんの事で動いてるってどういうことだろ?生きてるけど記憶なくなって、どこかで生活してくれてるのかな?そうだったら嬉しいけど……実弥さんの雰囲気からそうでもなさそうな……)

いくら考えても分からないし、実弥もこれ以上話す気はないというように風音の手首を引っ張り静かに目的の場所へ足を動かしている。

(あと少しで教えていただけるし……とにかく失礼のないようにしないと。髪も着物も大丈夫かな?乱れてなかったらいいけど)

引っ張られていない方の手で目に見える乱れだけ整え、あとは実弥に導かれるまま静かに足を動かした。
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