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涼風の残響【鬼滅の刃】

第3章 能力と剣士


結局、あれから何も話すことのないまま朝餉の時間を終えると、部屋の外で待ってくれている実弥を待たせないよう手早く着替え、部屋に置いていた荷物を背負い、実弥と共に本来実弥が体を休める予定だった部屋に移動した。

そこには確かに誰かがいた形跡があるのに誰もおらず頭の中に疑問符を浮かべるも、今の実弥に聞こうにも聞きにくい雰囲気を出しているので、諦めて実弥の準備が整うのを静かに廊下で待った。





「あの……鬼殺隊に入ってない私がどうして本部に……呼ばれたんですか?実弥さん、少し怒ってるように見えますし……少し気になります」

風音の重い荷物を背負ってくれたので風音に怒っているわけではないと理解しているが、仲間に対して苛立ちを見せていた時とは全く違う張り詰めた雰囲気が風音の心の中に不安をもたらした。

歩きながら不安げに見上げてくる風音の頭を撫で、実弥は気持ちを落ち着かせるように深呼吸を行った。

「悪ぃなァ。ちょっと気が立ってんだわ……お前に対してじゃねェから気にすんな。それより、本部まで運んでやるから前に来い、俺が許可出すまで目ェ開けんな。分かったかァ?」

気がたっている実弥に意見などする気の全く起きない風音は、小さく頷いて素直に実弥の前に移動して抱え上げてもらった。

「気分悪くなったら言え、こっからだとそんな距離はねェから一気に向かう。よっぽどの事がない限り目も口も開くなよ。舌噛んでもいけねぇし、本部の場所を知られるわけにはいかないからな」

「はい!何だか色々緊張しますが、気をしっかり持って挑みますので……運搬よろしくお願いします。帰ったらお昼ご飯、一緒に食べてくださいね?」

朝餉を食べ終えたばかりなのに昼餉の話をする風音に苦笑いを浮かべて頷くと、人気の無い道を実弥は人一人の重さを感じさせない速度で移動を開始した。

(昼飯……食える気力がコイツに残ってたらいいがなァ。寝込んじまったら今度こそ蝶屋敷に直行になっちまうぞ……)

実弥の心の声はもちろん大人しく運ばれている風音には届いていない。
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