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涼風の残響【鬼滅の刃】

第17章 芸術と嘘吐き


風音の右前腕には若葉色の風や葉を模した痣。
実弥の右頬には深緑の風車を模した痣。

先の戦闘で消耗していると言えど、終わりの見えてきた戦いとなると風音の極度の興奮状態でどうにか乗り切れるものだ。

「師範!あと三時間くらい戦い続けられそうです!なんか体がフワフワして気持ちよくなってきました!」

「そうかィ!奇遇だなァ、俺も気分良くなってきたとこだ!そのまま押し通せェ!」

師弟揃って大変なことになっている。
二人の体力の消耗具合を考えるとそろそろ限界が近いはずなのに、頭の中の何かが吹っ飛び戦闘そのものに快感を得ているようだ。

「貴様らぁ!儂を虐めて楽しいかぁ?!」

「「うるさい、黙れ」」

分身への返答もばっちり揃った。

それが分身の怒りを増長させたが、懇親の一撃を……と手を太鼓に持っていく途中で動きが止まる。

しばらく警戒を解かず日輪刀も構えたままにして二人が様子を伺っていると、分身の体が乾いた土のようにボロボロと崩れ出し、やがて荒れ果ててしまった地面と同化した。

その様子を確認すると、実弥は目を爛々と輝かせている風音に歩み寄り、興奮冷めやらぬ体を抱き寄せて労うように背をポンポンと叩いてやる。

「風音、よく踏ん張った。もう気ィ鎮めろ、このままじゃあぶっ倒れちまう」

「は……はい。勝った……師範、上弦と戦い大怪我を負わずに戦闘を終えられました。それもこれも師範や柱の方々が今まで手を差し伸べて下さった……お陰様です。初めてどなたの手も煩わせることなくお家に帰られる!」

二人が日輪刀を鞘に戻した次の瞬間、風音の体が……ではなく、実弥の体が突如としてふわりと浮き上がり、いつもは頭一個分下にある風音の顔が、まさかの二個分下に見えた。

つまり風音が実弥の体を両腕で抱え上げてしまったのだ。

「おぉ……ちょ、お前!下ろせ下ろせェ!おかしいだろォ……女のお前が男の俺を抱え上げてどうすんだよ……すっげェ複雑な気分になんだが」

「わわっ!ごめんね!痣が出てたら力も強くなるみたい……あ、あの……実弥君」

地面へと下ろしてから実弥の手を握り締める風音の手は小刻みに震えており、これから言うことに少なからず緊張しているのだと伝わる。
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