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涼風の残響【鬼滅の刃】

第17章 芸術と嘘吐き


「おい、お前は自分が死なねェことだけ考えて動け。血鬼術がどんなのか分かってんだ、俺に先を送る必要なんかねェぞ!」

風音の返事を聞く前に実弥は一体となった分身へと切りかかって行ってしまい、反論する暇すらなかった。

「私も師範を守りたいのに……はぁ……よし!夙の呼吸 参ノ型 凄風・白南風」

駄々をこねても実弥が前言撤回するわけもない。
それに分身が容赦してくれるなんてもっと有り得ないので、実弥が技を放った後にすかさず技を重ねて鬼の体に斬撃を見舞った。

二人の攻撃で出来た傷口から血飛沫が上がるがそれも一瞬。
瞬きする間に傷口は塞がり、不快げに顔を歪めた分身は四体の血鬼術、それらに加え木の龍を展開してきた。

「すぐに傷が!それに……くっ、避けるの大変!」

「風音ー!突っ込んでくの得意だろォ!何があっても攻撃する手ぇ緩めんなァ!」

得意も得意である。
他の柱だと窘められる戦法も、その戦法を叩き込んだ張本人である実弥相手だと窘められるどころか推奨までしてくれる。

いつも通り、戦い慣れた方法を取らせてくれる実弥の言葉に思わず風音の顔に笑みが浮かんだ。

「分かりました!師範は必ず私が守ります!私に何があっても師範も攻撃する手を止めないでください!夙の呼吸 玖ノ型 星の入東風!」

「あ"ぁ"?!柱を守るなんざ百年早ェんだよ!デカい口叩く前に……自分の身守りやがれェ!風の呼吸 捌ノ型 初烈風斬り!」

風音が喜び勇んで数体の木の龍を切り刻んだ合間を脱い、実弥は本体へ迫り寄って直接的斬撃を幾つも放つ。

数え切れないほどに任務を共にしてきた二人の連携は上弦の肆の分身と言えど、簡単に避けられるほど生易しいものではなく、どの攻撃も漏れなくくらってしまった。

何か二人の連携を断つ方法はないか……
猟奇的な笑顔を張り付かせ向かってくる二人の内、一人の動きだけでも止められないか……

考えた末、風柱より力量が劣る少女に目を付ける。

分身には分かるはずもない感情だが、今までこの二人に頸を斬られた鬼の情報によると、互いが互いに想い合い信頼し合い、なくてはならない存在らしい。

「ならば引き離すまで。まずは貴様からだ」

全ての血鬼術、今や八体にまで数を増やした龍が向かった先は実弥だった。
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