第17章 芸術と嘘吐き
その音に反応してチラと玄弥を見遣ると、前に共闘した時と同じく恐ろしく的確に炭治郎や禰豆子の合間を縫って鬼へと鉛玉を撃ち込んでおり、遠目で見ても二人の助けになっているのが分かった。
見事な連携に負けじと風音も実弥が地上で技を放ったのを見計らい、近接戦を得意とする鬼の背後へ回り技を放つ。
「夙の呼吸 陸ノ型 紗夜嵐(さよあらし)」
風音が袈裟斬りに空を切るとふわりと鬼の背に薄い風の膜が忍び寄り……その儚げな見た目でどうすればそんな威力が出るのかと、実弥でさえ首を傾げ続けている斬撃が見舞われた。
「エグいなァ!その技、もっと速度出してみろォ!威力上がんじゃねェかァ?」
「次に出す時やってみます!……師範、そろそろ空飛んでた鬼が戻って来ます!戻り次第四体の分身が一体に融合するので、作戦通りで大丈夫ですか?」
鬼の奇襲に備え、この場にいない無一郎や蜜璃も含めて作戦を練っていた。
こちら側、風音たちは二手に分かれて戦うというもの。
今出ている四体の鬼が融合し一体になった際、予知通りならば本体がこの場から逃げるように立ち去る。
その後を追い本体の頸を斬るのは玄弥、炭治郎、禰豆子。
この場でより強力になる融合した一体の分身の足止めを行うのは風音と実弥。
不測の自体が数多く起きたものの、現在は当初の予定通りの人数が揃ったことにより、実弥がその作戦を無視するわけもなく。
「事前に話した通りだ!お前らァ!取り逃しなんてしてみやがれ……タダじゃおかねぇからなァ!風音もしっかり動け!ヘマしやがったらタダじゃおかねぇぞ!」
風音にとっては叱咤激励、三人にとっては脅しとなる実弥の言葉にそれぞれ異なる心境で大きく頷き、実弥を含めた全員がいるべき位置へと移動を果たした。
そして一体の分身に吸収されていく三体の分身を見送りながら、風音は起こり得る未来を炭治郎たちへと送り込む。
「今の光景は参考程度だと考えていて下さい!どうか皆さん無事で……ここで足止めして待ってます!」
「ありがとう!待っててくれ!すぐに本体の頸を斬って戻るから!」
炭治郎を先頭に三人が森の中へ姿を消すと、風音と実弥は一体となった鬼へと向き直った。
本体が死なない限り消えない分身はいつも相手取る鬼よりも不気味に映った。