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涼風の残響【鬼滅の刃】

第17章 芸術と嘘吐き


蜜璃と別れて暫く走り、実弥たちが戦闘を繰り広げている場所まであと少しのところまでやってきた。

全員の先が頭の中に流れ込み安堵したのも束の間、炭治郎たちの視界の端にチラチラと映る怒り狂っている実弥の姿に肩をびくつかせる。

「すっごく怒ってる?!どうしたんだろ……いつも鬼と戦ってる時も怒ってるけど……怒り方が凄まじいと言うか……」

何か良くないことが起こったのかと考えても過去を見ることの出来ない風音では分からない。

考えても分からないなら後回しだと気持ちを切り替え、森の中の開けた場所へと飛び出すと、突然の浮遊感と思わず目を瞑りたくなるほどの閃光、耳を塞ぎたくなる轟音が風音にもたらされた。

「無事な姿見せたと思えば……すぐに殺られそうになんなァ!俺らがどんな屑と戦ってっか知ってんなら用心しねェか!」

興奮状態、激昂状態により口調や声音は厳しいが、鬼の分身と違い抱えてくれる手の力は優しく、場にそぐわないと理解しつつも風音に笑みが零れる。

「お手間を取らせてしまいすみません……でも助けていただいてありがとうございます。私、鬼の分身に運ばれてただけでほぼ戦闘をしていません。体に多少の痺れはありますが、それ以外は万全です!」

雷が止んだ一瞬の隙に地面へ下ろしてもらい、万全だと言い張る万全じゃない体を動かして、いくつも放たれてくる雷を避けては技を繰り出す。

もちろん実弥も同じ行動をしているが、視線は何度か風音の肩に向かっていた。

「肩……その傷は俺が逃した屑が負わせたもんだァ。悪ィ」

「こんなのかすり傷ですよ!私が油断してたから空に拐われただけですからね。師範……それよりその手に握られてるのは玄弥さんの銃なのでは?」

ばつ悪そうに表情を歪めた実弥に笑顔を向け、その後は何故か実弥の手に握られている銃に意識が向いてしまった。
玄弥はと言うと……刃渡りが短い日輪刀で懸命に鬼に立ち向かっている。

「あ"……クソ!不死川ーー!受け取れェ!」

どうやらお借りしたまま返却するのをうっかりしていたらしい。

的確に玄弥の元へと投げられた南蛮銃は無事に持ち主の元へと戻り、それと同時に破裂音が何発も響いた。
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