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涼風の残響【鬼滅の刃】

第17章 芸術と嘘吐き


「痛いってば!離して!触られるのも不愉快だ!」

上空へと連れ去られた風音は現在、空を飛べる怪音波を放つ鬼によって運ばれていた。
しかし実弥のように優しく運んでくれている訳もなく、乱暴に掴まれた肩には爪が突き刺さり激痛を伴っている。

その痛みを伴う爪から離れなくては何処の誰の元へ運ばれるのか……考えるだけでも嫌なものしか浮かばないので、肩から爪を引き剥がそうと懸命にもがいているところだ。

「貴様は頭がおかしいのか?ここで儂から逃れても落ちて死ぬのが関の山だ!大人しく運ばれているのが懸命ぞ」

「何が、懸命ぞ……なの?あんたの頭の方がどうかしてる!私は鬼になんてなりたくないし、喰べられるのも真っ平御免だ!あ……ねぇ、あんた変な音波出して私を殺せるくせに殺さないんだね。私を殺したら鬼舞辻無惨に叱られるの?大好きな鬼舞辻無惨に怒られるの?」

ここが上空だと分かっているはずなのに挑発してくる風音を黙らせるため、鬼の分身は爪が更にくい込むように力を入れる。
だがこれだけで風音のお口が閉じるはずもなく、まるで無一郎の煽りに感化されたように減らず口が止まらない。

「そもそも刀鍛冶の里を奇襲でもしないと鬼殺隊を弱体化出来ない鬼の集団ってどうなの?鬼は人よりも有利な条件で戦えるのに。怪我してもすぐに治る、手足が千切れても再生する。それにお日様が怖いからって剣士と戦うのはいっつも夜だよね?鬼に有利な状況の中、今回の奇襲が失敗した気分はどう?」

「うるさい小娘よのう……そんなに痛めつけられるのが望みであればこの肩を捩じ切ってやろうか?!そうすれば少しは……ギャッ!」

肩を捻じ切られてたまるものかと、風音は右手に握ったままの日輪刀の柄を口で食み、右腕を切りつける。
そして再び右手に日輪刀を握りしめて鬼の手首を切り裂き、すかさず自ら作った傷口をそこに擦り合わせて血を流し込んだ。

一連の動きに要した時間、僅か数秒。

鬼にとって猛毒である血を流し込まれた分身は痛み苦しみに反応し、反射的に肩から爪を剥がして風音を空中に放り出した。

この風音にとって絶望的な状況の中、何故か顔は笑みで満たされている。

「あんたなんかそのまま地獄に落ちちゃえばいいのに……蜜璃ちゃん!ごめんなさい!受け止めてもらえると凄く助かります!」
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