第17章 芸術と嘘吐き
「師範のところにも鬼が!早くあの魚殲滅しないと!……もう!魚がどんどん増えてるんだけど!……あ、これは……再び想定外の未来が舞い込む予感」
三日間で幾つも幾つも未来を見た。
里の人たちはその三日の間に空里と言われる、所謂予備の里へと移動して行った。
それを手伝ったり鬼に備えて厳しい鍛錬を行う傍ら、実弥に付き合ってもらって、無一郎や炭治郎、玄弥の元へと赴き様々な数々の先を見てはそれらを頭に叩き込んでいった。
それより更に無数にある未来を余すことなく見ようとしても、時間にあまり余裕はなかったし、何より実弥に無理を禁じられてしまい、もっともっとと望んでも……実弥がふとした瞬間に見せる悲しみの混じった表情を見ると、無理を押し通すことなど風音に出来るはずもなかった。
しかし今となって思えば、何かの拍子で力が暴発して自分の体が戦闘不能に陥っていたかもしれない。
そう考えれば実弥の判断に感謝しか湧いてこない。
今こうして鬼の分身みたいな魚の対処が出来ているし、何よりあの少年を助けることが出来たのだから。
「うん、私が先を見なかったとしても時透さんや炭治郎さんたちは勝ててたんだ。どの未来でも誰も死ななかった……つまりこれから考えうる最悪の事態が起こっても私も死なない!……よし、まずは露払いから!」
まるで人がいる場所が分かっているかのように迷うことなく里長たちの元へ……人間の足で不気味に歩く魚の前へと跳躍して降り立ち、ここ数日で実弥に扱きに扱かれ、威力の上がった技を幾つも何度も放っては背中の壺を破壊していった。
その甲斐あって数分後には目に見える範囲の醜い魚はいなくなり、残されたのは耳が痛くなるほどの静寂と、点々と気味悪く佇む数個の壺。
「あぁ……絶対この壺のどこかから伍が出てくるよ。ニョロニョロした目か口かよく分からない状態の鬼が。直に見てみたいって言ったけど……大丈夫かな、私。腰抜かしちゃわないかなぁ!」
腰を抜かす心配をしているとは思えない速度で壺へと走りより、なんの迷いもなく一つ目の壺を一刀両断。
「……これじゃない。ここの壺……囮なんじゃない?あの子の未来は……大丈夫。鬼に襲われる様子はない……ってことは。里長のところ!」