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涼風の残響【鬼滅の刃】

第17章 芸術と嘘吐き


技名が聞き取れた時には既に現れた鬼の胴体を斬り裂き、家屋の近くに生えていた木を薙ぎ倒していた。

「ようやくお出ましかよ。柱が待ち伏せしてんの分かってるから怖気付いたのかと心配してたんだぜ?おら……分身でも木の竜でも何でも好きに出しやがれェ!貴様の頸ごと斬り落としてやらァ!」

現れたのは風音が事情を話して炭治郎の先を見せてもらった際に、自身の頭に流し込ませた情報通りだった。
老人のような様相に額に瘤のようなものがある鬼。

醜い鬼の口から吐き出される言葉はやはり醜く、全てが実弥の逆鱗に漏れなく触れた。

やめてくれ、痛い、いじめないでくれ

弱者のふりをする目の前の鬼は人を多く喰らったからこそ上弦の肆になったのだ。

元々鬼を心の奥底から憎んでいる実弥にとって、吐き出される言葉は金属を擦り合わせて出る音よりも不快な音に聞こえる。

「やっぱ鬼の戯言なんて聞けたもんじゃねェなァ!」

鬼の戯言聞く暇あるなら頸斬っちまえ

風音に何度も言い聞かせ、自らも今までそうやって鬼の頸を斬ってきた。
それをまるで証明するかのように日輪刀を横へ薙ぐ。

「兄貴!そいつは頸斬るたびに分裂してしまう!」

玄弥の制止の声は聞こえていないかのように、迷うことなく実弥は鬼の頸を斬り落とした。

「俺に弟なんかいねェって言ってんだろうがァ!愚鈍なテメェに言われなくても、んなこと分かってんだよ!心臓の中に本体隠れてんだよなァ?!だがこの鬼のどこに心臓あんのかテメェは知ってんのかァ?!」

誰も答えられない。
事前に風音に見てもらうことも可能だったが、無数にある未来を全て見てもらうわけにもいかなかった。

ただでさえ人が傷付くところを見て心の奥を痛ませ、ひっそり涙を流してしまう少女に無理などさせられるはずもなく……
また、いつ暴発するかも分からない力を無闇矢鱈と使用させられなかったのだ。

「分裂した末の鬼の心臓の中にいやがんだぞ!そいつ引き摺り出さなけりゃ本体もクソもねェんだよ!口だけしか動かせねぇならすっこんでろォ!」

こうして実弥の怒号が響いている間にも鬼の体は風音の予知通り……玄弥の言葉通りに二つに分かたれ攻撃を放とうと戦闘態勢を整えていた。
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