第17章 芸術と嘘吐き
風音が戦闘を開始する少し前。
実弥は里内のとある家屋の中にて待機していた……玄弥や炭治郎、禰豆子と共に。
(クソがァ……こっちに出る鬼のが強ェからって理由で、俺がここに配置されること自体に文句言うつもりはないが……コイツらと一緒ってのが気に食わねェ!)
柱としての就任期間を考慮した上で実弥はここで待機することを本部から命じられたのだが、何分組み合わせが悪過ぎる。
認めることが憚られる竈門兄妹に、鬼殺隊から一刻も早く追い払いたいが故に実弥が嫌われ役に徹している実弟。
実弥の張り詰めた空気は部屋中に満ち溢れ、ただ静かに佇む炭治郎やそっぽを向いている禰豆子はともかくとして……玄弥はその空気に体を震わせていた。
(アイツならコイツらの緊張解してやるんだろうがなァ。俺には出来ねェしする気もねェ!ここに残るって決めたのはお前らだ、最後まで責任もって勝手に切り抜けろ)
とまぁ、こんな感じで部屋内の空気は一向に緩まる気配が皆無である。
暫くこの空気が続いたが、ある音が部屋に響いてきたことにより更に部屋内の空気が張り詰めた。
「予知通り風音が初めに戦闘開始かよ。塵屑の芥なんかに負けんじゃねェぞ……はァ、おい!いつまで縮こまってやがる!風音が戦闘開始したら次はこっちだって聞いてんだろォ!ぼさっとしてんなァ!」
先ほどまで同じように畳に座していた実弥はいつの間にか立ち上がり、刃こぼれ一つない緑に染まった日輪刀を鞘から抜き出していた。
その姿を見た炭治郎と玄弥はそれぞれ日輪刀や南蛮銃をベルトから抜き出して立ち上がり、禰豆子ものそのそと立ち上がって……成人女性ほどまでの背丈まで成長を果たす。
実弥は事前に天元から禰豆子の鬼化の話を聞いていた。
鬼化すると自我の制御が難しくなり、暴れてしまう恐れがあると。
炭治郎もそれを良しとしていないようで元の姿に戻れと促しているが、実弥からすると良しとしないどころの話ではない。
「そいつがどんな姿でいようが知ったこっちゃねェがなァ……そいつがこっちに標的絞った時点で俺は問答無用で頸斬り落とす。それ覚悟した上でどうすっか考えろ……風の呼吸 参ノ型 晴嵐風樹」