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涼風の残響【鬼滅の刃】

第16章 里と狼煙


「今の返事忘れんなよ。まずは時透、お前が過去の記憶を取り戻してェってのは変わってないんだな?」

「うん、でも別に今すぐじゃなくていい。……記憶が戻ったとしても何も変わらない可能性もあるし」

諦めが色濃く滲み出した表情はやはり人らしい感情が戻りつつある。

諦めてはいるものの記憶が戻ることで本来の無一郎の人格を引き戻せる可能性は高い。
風音と共に見た先の無一郎は笑顔であったり、鬼に対して憎まれ口を叩いていたのだから。

自分よりも風音よりも歳若い弟のような無一郎の本来の姿を見たい……と実弥は諦めるなと言うように手を頭の上にポンと置いた。

「やってみなきゃ分かんねェだろ。まァ取り敢えず時透の意思は問題ねェとして……あとは風音、さっきの返事忘れてねェな?」

「う……はい。忘れてません……条件をのむことを約束……します」

尻すぼみになる風音の言葉に額の血管がピクリと反応したが既に首根っこは掴んでいるので、どうにか浮き上がらせることなく条件を口にする。

「先を見る時は必ず俺にも流せ。返事は『はい』しか受け付けねェ。それ以外の言葉を出そうもんならその時点でこの話は終わりだァ。で、返事は?」

『はい』しか許されない、実弥の額の皮膚がピクリと動いていたこの状況で風音が反論出来るはずもない。
それに実弥が何故そんな条件を出したのか理解しているので、反論する気すら起こらなかった。

「はい。一人でこっそり見るような真似はしないとお約束します」

(あんまり時透さんが傷付くところを実弥君に見せたくないけど。私が一人で見た後の気持ちを慮ってくれてるからこその条件だもんね……それに時透さんに記憶を取り戻してもらいたい)

風音の返事に真剣な表情で頷き無一郎へと様々な話を語り掛ける実弥の隣り。
こちらは実弥と無一郎のことを考えた後に、先ほど反応を示してくれた言葉について思案する。

(誰とお話ししたんだろう……私よりも歳若いのなら家族の可能性が高い?)

「家族……お父さんかお母さん?それとも実弥君みたいにご兄弟がいらっしゃった?情けは人の為ならずって言葉ならご両親から……でもその後に他の誰かとそれについて話した可能性も……」
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