第16章 里と狼煙
風音と実弥は部屋に戻る前に朝餉を受け取り、部屋でそれを有難くいただいた。
その後は風音が先を見るための時間。
無一郎を探し出し昨日までの説明と、先に起こる鬼の襲来の件を伝えて先を見る許可を得た。
先を見る対象は今は無一郎だけ。
それでもこの場の三人が得られた情報は貴重なもので、鬼の襲来日時や鬼の正体が判明したのだ。
「……お前、塵屑共におびき出されてんじゃねェか?」
「僕もそう思うけど……先を見れても足手まといになるなら来ない方がいいんじゃない?」
二人へと先を伝えた結果、風音がおびき出されているとの結論に至った。
確かに上弦の鬼が出現する度にその場にいることに違いないが、それは炭治郎や禰豆子も同じはず。
それでも風音がおびき出されていると言うのは、鬼側が風音の能力を把握しており鬼舞辻無惨がそれを欲しているからだ。
このような状況でみすみす里に身を置くなど鬼の思うつぼである。
今回は側に実弥がついててやれると言えど、風音の父親だった鬼と初めて遭遇し、戦闘を繰り広げていた時に出された障子を再び持ち出されたら厄介だ。
しかも上弦の鬼が二体も現れるとなれば実弥と無一郎がいたとしても対処出来るか分からない。
「足手まとい……そう……ですよね。でも私は心に誓ったんです。師範の側で戦い続けるって。それにね、私はこの里の方々のお世話になっています。情けは人の為ならず……って言うのかな?助け支えてくれた方々に、今度は私が何かお返しする番なんです。私ばかりがご厚意をいただいていてはそれこそ鬼と同じ略奪者になっちゃう」
「え?今なんて言ったの?」
無表情だった無一郎の瞳に一瞬、ふわりと光が灯ったように見えた。
それは風音だけでなく、静かに遣り取りを聞いていた実弥も感じ取れたようで、思わず二人同時に無一郎の手に触れていた。
風音も実弥も無一郎がどの言葉に反応したのかまでは分からないので、この光が完全に消えてしまわないうちにと風音は直前の言葉を復唱する。
「えっと……鬼と同じ略奪者……って言いました」
「違う、それじゃなくて。もう少し前」