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涼風の残響【鬼滅の刃】

第16章 里と狼煙


例えばこれから今回と同じようにして眠ることが……近いうちにあるのだろうが、その時にもこうしてよじ登られる可能性がおおいにあるということだ。

今日は驚きで煩悩なんて湧く暇すらなかった。

しかし慣れてきた時にそれが湧く自信しか実弥にはない。

「……俺を試してんのかよ。はァ……まァいい。もう少し寝てて構わねェぞ?まだ朝早ェし朝飯まで時間あるからなァ」

取り敢えず先のことはその時に考えることとし、自分の暖かさを求めてよじ登ってきてしまった風音の体を布団の中で抱え上げ、苦しくないようにと全身を真ん中に持ってきてやった。

「苦しくねェか?」

「苦しいどころか更に居心地が良くなって動きたくない。もう眠くないけど……あと少しだけこのままがいいな」

風音は更に心地良くなったことにより眠くないと言いつつ微睡み始め、実弥も実弥で天然懐炉のような風音の暖かさに思わず船を漕ぎそうになっている。

このまま二人して眠ってしまっても一向に構わないのだが、何かの拍子にこの部屋へと誰かが赴いてしまった時に迅速な対応ができなくなってしまうと色々困るので、どうにか意識を保たせる。

朝餉の時間までどうやって意識を保たせておくか……と考えていると、存外はっきりとした声音で風音がそのままの格好で問い掛けてきた。

「日輪刀、あとどれくらいで修理終わるかな?持ってきたお金で修繕費足りる?」

「あぁ……日輪刀はあと二・三日でどうにかなんじゃねぇか?あと刀の修繕費いらねぇぞ?ここは鬼殺隊専門の刀鍛冶の里だ、個人で金の遣り取りはしねぇ」

新たな事実に風音の体がビクリと震え、真ん丸に見開いた瞳を実弥に向けた。

「え?!そうなの?!じゃあせめてみたらし団子たくさん買わないと!うーん……このままもう少しいたいけど、せっかく鋼鐵塚さんが刀を修繕してくれてるんだから、私はそれに見合った努力しなくちゃ!実弥君、私はちょっと柔軟するね」

と言いつつ名残惜しそうにもう一度実弥の胸元に数秒間しがみつくと、風音は布団から抜け出してそそくさと隊服を身にまとい、あっと言う間に柔軟する体勢を整えてしまった。
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