第16章 里と狼煙
(……朝かァ?にしても何か布団にしては重さが……って何だァ?!どうなってやがる!何で俺の上で寝てんだよ?!……起きてんのかァ?)
薄い肌着姿の風音に煩悩が湧く暇もなかった。
窓から射し込む朝日の眩しさと布団にしては重さのある何かに疑問を感じ目を覚ますと、風音が器用にも実弥の上に上体を全て預けて眠っていた。
起こすために乗っかったのかと思い僅かに顔を上げて確認してみても、風音は気持ちよさそうに寝息を立てているだけ……
「嘘だろォ……コイツの寝相にも驚きだが、乗っかってきた時に気付かなかった俺にも驚きだわ」
小さくボヤいてみても風音が目を覚ます気配はなく、規則正しい静かな寝息を立てたままだ。
(えぇ……起き上がることすら出来ねェじゃねェかァ。いや、まァ重くねェしまだ夜が明けて間もないからいいんだけどよ……布団、ちゃんと被らねぇと風邪引いちまうぞ)
実弥によじ登った時に乱れたのか、風音の肩は布団から出てしまっており、薄い肌着姿も相まってとても寒そうに映ってしまう。
それをどうにかするために布団を引っ張り上げ肩まで被せてやると、少し冷たくなった肩や背中に腕を回して抱き締め暖めた。
「警戒心は相変わらず育たねェなァ。このままじゃあ俺にいつ襲われても文句言えねェぞ」
無警戒に気持ちよさそうに眠る風音に煩悩が湧くわけもないが、何となくポツリと呟いてしまった。
すると自分に話し掛けてくれているのだと夢の中ながら感じ取った風音の瞼がゆっくりと開き、寝ぼけ眼で実弥の顔を見上げ見つめる。
「ん……実弥君……おはよ……あれ?わぁ!実弥君の上!抱き上げてくれたの?」
そして勝手に勘違いして、寝起きにも関わらず喜び全開の満面の笑みで実弥に抱きついていった。
抱き上げてもらったのだと勘違いしてくれたままでも良かったのだが、肌着姿の風音を抱き上げたのだと思われるのは何となく実弥にとって恥ずかしく、そこは丁寧に訂正を行った。
「いや、お前が寝てる時に無意識によじ登ってきたんだろうよ。普段寝相悪かねぇのに珍しいなァ」
「私が……なるほど。よっぽど実弥君の暖かさが恋しかったんだね。こんなに心地良い暖かさが離れたら、寝てたとしてもよじ登ってでも暖かさ探しに行っちゃうよ」