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涼風の残響【鬼滅の刃】

第16章 里と狼煙


翌朝、健康的な生活を送り始めた二人は眠い目を擦りながら無一郎との約束を果たすため、紙へと昨日の出来事と風音の見た先を記して会いに行った。

するとやはり無一郎は昨日の出来事は忘れており、全てを説明して昨日より更に一週間の日を遡り先を見ては紙へと記していく。
二週間を一気に確認すると風音の眠気が酷くなるため、一日に遡るのは一週間にするという実弥の提案に無一郎が否ということもなく……と言うより関心が薄いので全く気にしていないようである。

昼間は鍛錬、夜は無一郎の部屋へと赴き先を見てその後に風呂へと足を運んで疲れを落とす、を四日ほど続けたある日の夜、風音は布団の上で酷く沈んだ表情をしていた。

「風音、明日はやめとけ。疲れ溜まってんだろ、顔真っ青じゃねェかァ」

顔色の悪い風音の頬を撫で明日の無一郎との時間を先延ばしにするよう提言するが、風音は首を左右に振ってそれを良しとはしなかった。

「疲れは溜まってなくて……時透さんの先を遡る度に怪我が増えてくから悲しくて。だって今から二週間後の時透さんが大きな怪我を負ってるんだよ?実弥君、ここの里には鬼なんて来ないんだよね?」

涙の薄ら滲んだ瞳で見つめられた実弥は風音の動揺がおさまることを祈りながら頭を撫でてやり、頭の中で鬼殺隊に入った頃からの記憶を引っ張り出して答える。

「俺が鬼殺隊に入ってからも入る前も刀鍛冶の里に鬼が出たって話は聞いたことねェ。俺たち柱を含め剣士や隠全員にこの里の場所は秘匿にされてんだ、鬼に奇襲されることはねぇだろうが……気になるなら見てみるかァ?」

実弥がそう言うのならば心配はない。
……いつもなら今の実弥の言葉で安心して明日も明後日もこの里でのんびり過ごしていたかもしれない。

だが無一郎の先を見る毎に酷くなる無一郎の傷があまりに痛々しい。

柱である無一郎にこのような傷を負わせるのは普通の鬼ではないはずで、その強大な力を持つ鬼がこの里に現れるのではと思うと気が気でなくなってしまった。

実弥のことは信じているが、実弥は風音の言葉に不快感は示しておらず何なら先を見ても構わないと手を差し出してくれているので、その手に自分の手を重ね合わせてキュッと握り締めた。
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