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涼風の残響【鬼滅の刃】

第16章 里と狼煙


どうしたものかと実弥に視線を向けて伺うと、戸惑い悩む風音の代わりに無一郎へと向き直って頭を撫でてやった。

「風音に見てもらうこと自体は構わねェ。だがコイツの見れる期間内に時透の記憶が戻ってる保証はない。それに半年先までの先を細かく見ようとすればそれなりに時間がかかる……コイツの体力が持つ時間だけ、数日に分けてでいいなら見てもらえ」

半年弱先まで見れると言ってもその全てを一気に見ることは不可能。
希望する日付があるならば風音の中で日数を調整して見ることが出来るが、無一郎が望むのは見れる期間内に自分の記憶が戻るかどうか。

今の無一郎の状況を鑑みると難しいかもしれない……記憶を残しておくことが困難な状態だからだ。

「そっか、それならいいよ。そこまでして望んでないから」

すぐに出来るなら……と言っただけで長期間に渡り知ることは望んでいなかったのだろう、無一郎は実弥の手から逃れ風音の頬から手を離して立ち上がり廊下へと出ようとしてしまった。

それを手を握って止めたのは風音だった。

「待って下さい!確かに時間が掛かるし時透さんの望むものが得られないかもしれない。でも試す価値はあると思います!数日間はここにいますよね?今日から毎日見せてもらい、その結果を紙に記し続け、それを毎日時透さんに見せに行きます!やってみましょう!……いつ戻るか分からなければ、私なら不安になると思いますし……」

一気に捲し立てる風音に無一郎はキョトンとして再び首を傾げる。

「自分のことじゃないんだからそこまで必死になる必要ないよ。特に今のままでも不便してないし……」

「嫌じゃねェなら見てもらえ。覚えてねぇかもしんねぇけど、風音が先を見ることによって風音の血の毒の濃度上がんだし、能力の向上にも繋がんだァ。どっちにとっても不利益なることねェだろ?」

顔だけ振り返っていた無一郎、そのまま暫く逡巡。

今し方自分に向けられた実弥の言葉を頭の中で反芻させ、無表情のままくるりと向き直ってストンと畳に腰を落ち着けた。

そして風音は嬉しそうに笑顔となって実弥を見上げた後、無一郎にもその笑顔を向けて握ったままだった手を握り直す。
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