• テキストサイズ

涼風の残響【鬼滅の刃】

第16章 里と狼煙


風音が部屋に戻ったことにより無一郎の怪我の手当てはすぐに完了し、三人で夕餉を囲んだ。

実弥や無一郎があまり話さなくても風音が食事の合間合間に何かしらの話題を持ち出すので静まり返ることなく、実弥は暇をする間もなく……無一郎は嫌な顔をしていなかったので苦痛な時間を過ごしてはいなかったようである。

「ご飯美味しかったですね!ところで今更なんですけど、時透さんは実弥君に何かご用事があってここに来られたんですよね?私、膳を返してからお外を探索するのでゆっくりしていってください」

何かしらの話題を持ち出していたのに無一郎がこの部屋へ赴いた理由を聞いていなかったらしい。
それによって実弥に用事があるのだと思い込んでいる風音が膳を重ねるために立ち上がり動こうとした……のを止めたのは実弥だった。

「時透はお前に手当てしてもらうためにここに来たんだってよ」

「え?!そうだったんですか?!ではせっかくなので傷薬を持って帰って下さい。結構傷が深かったので念の為に化膿止めも、実弥君にはこっちね」

膳を重ねようと立ち上がっていた風音は先ほど薬製作を行っていた場所と鞄が置かれている場所を巡り戻ると、無一郎へは二つの容器を、実弥へは一つの容器を手渡した。

「傷が出来た時はこの二つを塗ってから包帯で固定して蝶屋敷で胡蝶さんの手当てを受けて下さい。実弥君に渡したのは練り香水だから、好きな時につけてもらって大丈夫だよ」

ニコリと微笑む風音に笑顔を返したのは実弥だけで、無一郎はやはり無表情のまま。
しかし何か閃いたのか僅かに目を見開き、ゆっくりと風音に向かって腕を伸ばし頬に手を触れさせた。

既視感を覚える無一郎の行動に風音と実弥が首を傾げると、無一郎も首を傾げてからぽつりぽつりと言葉を発した。

「確か君は未来が見れるんじゃなかったっけ?本当なら試してくれない?僕の記憶が戻るかどうか」

今の風音は半年弱先まで見えるように成長している。

見ること自体、風音にとって造作もないことだ。
しかし人の記憶に関わる重要なことを見ても構わないのか分からない。
それに無一郎が記憶を失ってから長い月日が経過しているので、僅か半年弱の先を見たとて望むものが得られるかも分からないのが現実だ。
/ 985ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp